埼玉県鶴ヶ島市における約2万年前以降の花粉生層序と古気候変動
鶴ヶ島市の2地点で得られた花粉分析資料を再検討し,推定される古植生変遷から約2万年前以降の花粉生層序を設定し,古植生から推定される古気候変遷とグローバルな気候変動と対応を考察した.IK-F帯は亜寒帯針葉樹林が優勢な寒冷気候を示すが,冷温帯落葉広葉樹の一定の拡大が認められ,下位のIK-E帯よりは寒冷の程度が低い.このことは,約19,000年前の最終氷期最盛期以降,最初の融氷水増加イベント(19kaイベント)に対応する.IK-E帯では,亜寒帯針葉樹林が優勢で,冷温帯の落葉広葉樹は極めて少ない.古気候はもっとも寒冷だった.この帯の中にハインリッヒイベント1と呼ばれる,寒冷化イベントに相当する層準が,...
Saved in:
| Published in | 埼玉県立自然の博物館研究報告 Vol. 12; pp. 1 - 16 |
|---|---|
| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
埼玉県立自然の博物館
2018
|
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 1881-8528 2433-8508 |
| DOI | 10.24715/smnh.12.0_1 |
Cover
| Summary: | 鶴ヶ島市の2地点で得られた花粉分析資料を再検討し,推定される古植生変遷から約2万年前以降の花粉生層序を設定し,古植生から推定される古気候変遷とグローバルな気候変動と対応を考察した.IK-F帯は亜寒帯針葉樹林が優勢な寒冷気候を示すが,冷温帯落葉広葉樹の一定の拡大が認められ,下位のIK-E帯よりは寒冷の程度が低い.このことは,約19,000年前の最終氷期最盛期以降,最初の融氷水増加イベント(19kaイベント)に対応する.IK-E帯では,亜寒帯針葉樹林が優勢で,冷温帯の落葉広葉樹は極めて少ない.古気候はもっとも寒冷だった.この帯の中にハインリッヒイベント1と呼ばれる,寒冷化イベントに相当する層準が,含まれる可能性がある.IK-D帯はコナラ亜属を主とする冷温帯落葉広葉樹林が拡大し,ベーリング期~アレレード期にあたる.IK-E帯とIK-D帯の境界での急激な温暖化は,融氷水パルス1A(MWP-1A)と呼ばれる約1,4万年前の温暖化イベントに対応する.IK-B帯,TS-B帯では中間温帯のモミ・ツガ林が拡大する.特にTS-B-2亜帯は,約3.5~2千年前の,いわゆる弥生の小海退に対応する気候変動が認められる.このように,中部日本の後期更新世から完新世の内陸部の古植生変遷は,グローバルな古気候変動に応答している. |
|---|---|
| ISSN: | 1881-8528 2433-8508 |
| DOI: | 10.24715/smnh.12.0_1 |