脳卒中片麻痺患者の咀嚼筋のCTによる観察
脳卒中片麻痺患者の患側に筋萎縮が現れることは, 中枢性筋萎縮として広く知られている。しかし, これら片麻痺患者の咀嚼筋について検討した報告はない。そこで, われわれは, CT撮影を行って咬筋と内側翼突筋の断面積を求め, 咀嚼筋の筋萎縮の有無について検討した。 対象は片麻痺患者12例と健常者7例で, それぞれの平均年齢は48.1±3.7 (mean±SD) 歳と46.0±5.8歳で両者の間に有意差はなかった。また, 片麻痺患者はいずれも罹患後3ヵ月以上経過した慢性例であった。 CT撮影は金属製の歯冠補綴物によるアーティファクトを避けるため, 下顎角から3cm上方で下顎下縁と平行になるように設定し...
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Published in | 老年歯科医学 Vol. 4; no. 1; pp. 33 - 36 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年歯科医学会
1990
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Subjects | |
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ISSN | 0914-3866 1884-7323 |
DOI | 10.11259/jsg1987.4.33 |
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Summary: | 脳卒中片麻痺患者の患側に筋萎縮が現れることは, 中枢性筋萎縮として広く知られている。しかし, これら片麻痺患者の咀嚼筋について検討した報告はない。そこで, われわれは, CT撮影を行って咬筋と内側翼突筋の断面積を求め, 咀嚼筋の筋萎縮の有無について検討した。 対象は片麻痺患者12例と健常者7例で, それぞれの平均年齢は48.1±3.7 (mean±SD) 歳と46.0±5.8歳で両者の間に有意差はなかった。また, 片麻痺患者はいずれも罹患後3ヵ月以上経過した慢性例であった。 CT撮影は金属製の歯冠補綴物によるアーティファクトを避けるため, 下顎角から3cm上方で下顎下縁と平行になるように設定した。筋の断面積は付属のソフトウェアーを利用して求めた。 その結果, 片麻痺患者については患側および健側ともに, 咬筋と内側翼突筋の断面積に有意差がなかった。健常者についても同様に筋の断面積に左右差がなかった。従って, 咀嚼筋に関しては, 片麻痺に伴う中枢性筋萎縮は認あられないものと考えられる。 しかしながら, 片麻痺患者と健常者を比較すると, 咬筋, 内側翼突筋ともに, 片麻痺患者で筋の断面積の減少を認めた。これは, 適切を欠く食事内容と放置された歯科疾患による咀嚼運動の不足により, 麻痺側, 健側ともに廃用性萎縮を来しているものと推測された。 |
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ISSN: | 0914-3866 1884-7323 |
DOI: | 10.11259/jsg1987.4.33 |