成人期に初発発作が認められた MELAS −脳卒中様発作前日を含めた発作前後の検討

目的:難聴とⅠ型糖尿病を併発した MELAS(mitochondrial encephalopathy lactic acidosis and stroke-like episodes)の症例の、脳卒中様発作前・発作時、および発作後の臨床症状について、発症前日も含めて検討した。症例: 34 歳の女性(2016 年)。12 歳で低身長が指摘されていた。23 歳時にⅠ型糖尿病が診断され、加療中であった。遺伝子解析により DNA3243A/G 点変異が認められ、ミトコンドリア脳筋症が確定され、両側中等度難聴を併発していた。31 歳時に初発の脳卒中様発作の診断により緊急入院となった。発作発症前日では純...

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Published in耳鼻と臨床 Vol. 62; no. 6; pp. 225 - 233
Main Authors 日比谷, 怜美, 池田, 勝久, 松岡, 理奈, 吉川, 智子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻と臨床会 20.11.2016
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ISSN0447-7227
2185-1034
DOI10.11334/jibi.62.6_225

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Summary:目的:難聴とⅠ型糖尿病を併発した MELAS(mitochondrial encephalopathy lactic acidosis and stroke-like episodes)の症例の、脳卒中様発作前・発作時、および発作後の臨床症状について、発症前日も含めて検討した。症例: 34 歳の女性(2016 年)。12 歳で低身長が指摘されていた。23 歳時にⅠ型糖尿病が診断され、加療中であった。遺伝子解析により DNA3243A/G 点変異が認められ、ミトコンドリア脳筋症が確定され、両側中等度難聴を併発していた。31 歳時に初発の脳卒中様発作の診断により緊急入院となった。発作発症前日では純音聴力閾値に比し、語音聴力レベルが顕著に低下を示した。発作後、聴力は発作前に比し、純音聴力閾値は若干低下した状態で経過し、語音聴力レベルは発作直前より改善した。考察: 1)脳卒中様発作発症前日、純音聴力閾値に比し語音聴力レベルが顕著に低下した。低下は、その後の脳卒中様発作発症により認められた異常所見側で顕著であった。これは、脳動脈の中膜平滑筋細胞と内皮細胞体内に、ミトコンドリアの集積と形態異常が生じ、平滑筋細胞の変性壊死が起き、これが末梢の血管系の病変とともに、聴覚中枢において著しく脳動脈病変が起きたことによるものではないかとも推察でき、さらなる検討が必要であると考えられた。 2)従来 MELAS の画像所見として、大脳基底核の石灰化、第 4 脳室拡大、小脳萎縮、および大脳萎縮が報告されているが、本症例も類似の所見が認められた。 3)脳卒中様発作の発症機序として、1 つの因子ではなく、最小動脈や血管内皮細胞内のミトコンドリア代謝障害による血管内皮細胞内の変性、破壊、漏出性出血、血液脳関門の脆弱性による血管性浮腫や、神経興奮などの多種多様の病態が関与していると考慮し、聴覚管理および聴覚補償を行う必要があると考察できた。
ISSN:0447-7227
2185-1034
DOI:10.11334/jibi.62.6_225