ケミカルバイオロジー的手法を用いたC型肝炎ウイルス生活環の解析

ウイルス学においてウイルス複製の分子メカニズムを明らかにすることは主要な課題のひとつである.また対象ウイルスがヒトに深刻な病態を引き起こす病原ウイルスである場合は,それとともにウイルスを排除する抗ウイルス剤,治療法の開発が望まれる.私たちの研究グループではウイルス複製の分子メカニズムを明らかにするとともに新たな抗ウイルス剤の候補を得ることを目的として,低分子化合物を用いたウイルス複製の解析をおこなってきた.その結果,C型肝炎ウイルス(HCV)複製を抑制する化合物としてシクロスポリンおよびタモキシフェンを再発見し,またHCV複製に重要な宿主細胞性因子としてシクロフィリン(CyP)およびエストロゲ...

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Published inウイルス Vol. 58; no. 1; pp. 73 - 80
Main Author 渡士, 幸一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ウイルス学会 30.06.2008
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ISSN0042-6857
1884-3433
DOI10.2222/jsv.58.73

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Summary:ウイルス学においてウイルス複製の分子メカニズムを明らかにすることは主要な課題のひとつである.また対象ウイルスがヒトに深刻な病態を引き起こす病原ウイルスである場合は,それとともにウイルスを排除する抗ウイルス剤,治療法の開発が望まれる.私たちの研究グループではウイルス複製の分子メカニズムを明らかにするとともに新たな抗ウイルス剤の候補を得ることを目的として,低分子化合物を用いたウイルス複製の解析をおこなってきた.その結果,C型肝炎ウイルス(HCV)複製を抑制する化合物としてシクロスポリンおよびタモキシフェンを再発見し,またHCV複製に重要な宿主細胞性因子としてシクロフィリン(CyP)およびエストロゲン受容体を同定した.さらにCyPは新しい抗HCV剤の標的となりうることが明らかとなった.今回おこなったケミカルバイオロジー的手法を用いたウイルス学の解析は,ウイルス生活環の新たな側面を明らかにするだけでなく,効率のよい抗ウイルス剤開発法となると期待される.
ISSN:0042-6857
1884-3433
DOI:10.2222/jsv.58.73