妊娠36週に閉塞性水頭症を発症した小脳血管芽腫の1例

妊娠後期に水頭症で発症した小脳血管芽腫症例を経験した. 症例は29歳女性. 妊娠36週に頭痛と嘔気を訴え徐々に傾眠となった. MRIでは左小脳半球に主座をおき強く造影される境界鮮明な腫瘤性病変を認め広範な浮腫により脳幹および第四脳室は圧排され水頭症を呈していた. 緊急帝王切開術にて児娩出後に腫瘍を摘出した. 術後4週間のリハビリテーションを経て自宅退院した. 小脳血管芽腫においては妊娠中の循環血漿量増大およびエストロゲン上昇, 胎盤由来の血管新生因子により腫瘍容積増大や脳浮腫増悪を生じ頭蓋内圧亢進や水頭症をきたすと報告されている. 母体優先の大原則のもと, 治療に際しては妊娠週数や母体の状態に...

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Published in脳神経外科ジャーナル Vol. 26; no. 8; pp. 610 - 616
Main Authors 冨永, 悌二, 三野, 正樹, 長南, 雅志, 岩渕, 直也, 加藤, 侑哉, 我妻, 理重, 田代, 亮介, 吉田, 昌弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科コングレス 2017
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ISSN0917-950X
2187-3100
DOI10.7887/jcns.26.610

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Summary:妊娠後期に水頭症で発症した小脳血管芽腫症例を経験した. 症例は29歳女性. 妊娠36週に頭痛と嘔気を訴え徐々に傾眠となった. MRIでは左小脳半球に主座をおき強く造影される境界鮮明な腫瘤性病変を認め広範な浮腫により脳幹および第四脳室は圧排され水頭症を呈していた. 緊急帝王切開術にて児娩出後に腫瘍を摘出した. 術後4週間のリハビリテーションを経て自宅退院した. 小脳血管芽腫においては妊娠中の循環血漿量増大およびエストロゲン上昇, 胎盤由来の血管新生因子により腫瘍容積増大や脳浮腫増悪を生じ頭蓋内圧亢進や水頭症をきたすと報告されている. 母体優先の大原則のもと, 治療に際しては妊娠週数や母体の状態に応じて個々の症例ごとに治療戦略を構築する必要がある.
ISSN:0917-950X
2187-3100
DOI:10.7887/jcns.26.610