口腔内乳頭腫症例の検討 - 特に胃食道逆流症 (GERD) との関係について

口腔内乳頭腫と GERD との関係を主に論じた。口腔内 23例中、GERD が疑われた症例は 12例 (52.2%) であった。そこで過去 20年間の口腔内乳頭腫を調べ、その発症年齢、部位などから両者の関係を考察した。口腔内乳頭腫症例の年齢分布は若年と中高年に症例の集積をみるとわずかに二峰性であったが、GERD 症例も同様の年齢分布を示すとの報告がある。口腔内乳頭腫は口蓋垂、口蓋弓そして口蓋扁桃、軟口蓋で症例の 68.3%、頬部のそれはわずか 1.4%である。HPV の感染には粘膜の微小な傷が必須であるが、粘膜損傷が多いと思われる頬に少ないこの事実は興味深い。筆者らはその理由を口蓋の小唾液腺よ...

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Published in耳鼻と臨床 Vol. 58; no. 4; pp. 169 - 178
Main Authors 井野, 千代徳, 井野, 素子, 溝口, 兼司, 田邊, 正博, 南, 豊彦, 多田, 直樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻と臨床会 2012
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ISSN0447-7227
2185-1034
DOI10.11334/jibi.58.169

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Summary:口腔内乳頭腫と GERD との関係を主に論じた。口腔内 23例中、GERD が疑われた症例は 12例 (52.2%) であった。そこで過去 20年間の口腔内乳頭腫を調べ、その発症年齢、部位などから両者の関係を考察した。口腔内乳頭腫症例の年齢分布は若年と中高年に症例の集積をみるとわずかに二峰性であったが、GERD 症例も同様の年齢分布を示すとの報告がある。口腔内乳頭腫は口蓋垂、口蓋弓そして口蓋扁桃、軟口蓋で症例の 68.3%、頬部のそれはわずか 1.4%である。HPV の感染には粘膜の微小な傷が必須であるが、粘膜損傷が多いと思われる頬に少ないこの事実は興味深い。筆者らはその理由を口蓋の小唾液腺より分泌される粘性の唾液にあると考察した。軟口蓋の小唾液腺より分泌された唾液はその部にとどまるかゆっくりと口蓋垂か口蓋弓を経由して咽頭へと動くのに対して、頬部では耳下腺導管が開口し漿液性唾液が迅速に流れ去って行く。軟口蓋の小唾液腺由来の粘液に混した HPV は上記した部位でとどまるか非常に遅く動くことで感染の機会が高まり、逆流した胃液も粘性の小唾液唾液に混して潜在感染していた HPV を活性化すると推察した。頭頸部悪性腫瘍と HPV との関係、特に口蓋扁桃の悪性腫瘍との関係が注目されている。同部位は乳頭腫発症頻度の極めて高い部位でもあり感染・発症に同様の機序が想定できる。今回報告した症例で乳頭腫が悪性化した例は確認していない。ただ、3例に部位を異にして口腔、咽頭、喉頭に悪性腫瘍が発症した。偶然の発症と捉えてはいるが興味ある事実でもある。
ISSN:0447-7227
2185-1034
DOI:10.11334/jibi.58.169