腫瘍様病変と良性腫瘍

腺腫様甲状腺腫は第5版WHO分類では,濾胞結節性疾患の名称で良性腫瘍に組み入れられるが,第9版甲状腺癌取扱い規約ではこれまでと同じように腫瘍様病変に分類される。腺腫様甲状腺腫の発病機序は多様であり,知見の集積とともに病名についての議論を深める必要がある。濾胞腺腫はクローナルな腫瘍性増殖で,圧排性に増殖し線維性被膜を形成する。遺伝子変化としてRAS系の遺伝子変異がみられることが多いが,機能亢進性腺腫ではTSH受容体遺伝子の変異がみられる。腺腫様甲状腺腫との鑑別は病理形態的所見で総合的になされる。乳頭癌様核所見を伴う非浸潤性濾胞型腫瘍(NIFTP)および悪性度不明な腫瘍(UMP)との鑑別点となる,...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本内分泌外科学会雑誌 Vol. 41; no. 1; pp. 3 - 8
Main Author 菅間, 博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内分泌外科学会 2024
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN2434-6535
2758-8785
DOI10.11226/ojjaes.41.1_3

Cover

More Information
Summary:腺腫様甲状腺腫は第5版WHO分類では,濾胞結節性疾患の名称で良性腫瘍に組み入れられるが,第9版甲状腺癌取扱い規約ではこれまでと同じように腫瘍様病変に分類される。腺腫様甲状腺腫の発病機序は多様であり,知見の集積とともに病名についての議論を深める必要がある。濾胞腺腫はクローナルな腫瘍性増殖で,圧排性に増殖し線維性被膜を形成する。遺伝子変化としてRAS系の遺伝子変異がみられることが多いが,機能亢進性腺腫ではTSH受容体遺伝子の変異がみられる。腺腫様甲状腺腫との鑑別は病理形態的所見で総合的になされる。乳頭癌様核所見を伴う非浸潤性濾胞型腫瘍(NIFTP)および悪性度不明な腫瘍(UMP)との鑑別点となる,被膜,血管浸潤と乳頭癌の核所見の判定基準には日本と米国で扱い方に差があり,注意が必要である。膨大細胞腺腫は細胞質に多量なミトコンドリアが存在する腺腫で,電子伝達系に関わる遺伝子に異常が認められる。
ISSN:2434-6535
2758-8785
DOI:10.11226/ojjaes.41.1_3