保守主義推定におけるコスト下方硬直性の交絡効果―Banker et al. (2016)の追試

標準的な保守主義推定モデルでは,利益を株式リターンに回帰することによって保守主義の程度を定量化する.しかしながら,Banker et al. (2016)は,保守主義の推定においてコスト下方硬直性が交絡要因となる可能性を指摘している.コスト下方硬直性は,売上高の増加時と減少時で利益のビヘイビアを非対称にし,その結果として,利益と株式リターンの間に非対称な関係を生じさせる.分析の結果,わが国においても保守主義の推定においてコスト下方硬直性をコントロールしなければ,保守主義の推定値は20.7%過大推定されるという証拠が得られた.また,経営者の所有権と保守主義の経験的関係を検証したShuto and...

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Published in管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 Vol. 33; no. 1; pp. 3 - 24
Main Authors 増岡, 慶次, 屋嘉比, 潔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本管理会計学会 28.03.2025
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ISSN0918-7863
2434-0529
DOI10.24747/jma.33.1_3

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Summary:標準的な保守主義推定モデルでは,利益を株式リターンに回帰することによって保守主義の程度を定量化する.しかしながら,Banker et al. (2016)は,保守主義の推定においてコスト下方硬直性が交絡要因となる可能性を指摘している.コスト下方硬直性は,売上高の増加時と減少時で利益のビヘイビアを非対称にし,その結果として,利益と株式リターンの間に非対称な関係を生じさせる.分析の結果,わが国においても保守主義の推定においてコスト下方硬直性をコントロールしなければ,保守主義の推定値は20.7%過大推定されるという証拠が得られた.また,経営者の所有権と保守主義の経験的関係を検証したShuto and Takada (2010)について再現テストを行い,コスト下方硬直性をコントロールした場合に,彼らの分析結果は部分的に頑健ではなくなるという知見を得た.本研究の結果は,わが国データを用いた保守主義に関する研究においても,コスト下方硬直性が交絡要因となることを示している.
ISSN:0918-7863
2434-0529
DOI:10.24747/jma.33.1_3