シロヤマゼンマイの培養系の確立とその教材としての有効性の検討

同型胞子シダ植物で最少の染色体数(2 n = 44)を持つシロヤマゼンマイ(Osmunda banksiifolia (Pr.) Kuhn)を培養系に導き,培養した個体を用いて年間を通して体細胞分裂と減数分裂が観察可能な方法を開発し,その教材としての有効性を検討した.胞子を滅菌してペトリ皿の1/2MS寒天培地に播くと,1週間以内に発芽し,約7ヵ月で前葉体に造精器と造卵器が成熟した.また,胞子を播いて約8ヵ月で受精が起こり,若い胞子体が形成され始めた.この若い胞子体を三角フラスコの1/4MS寒天培地に移植したところ,移植後約4ヵ月で胞子葉が形成された.さらに,三角フラスコでそのまま培養を継続した...

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Published in生物教育 Vol. 44; no. 2; pp. 68 - 75
Main Authors 池田, 秀雄, 川上, 敏行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物教育学会 2004
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ISSN0287-119X
DOI10.24718/jjbe.44.2_68

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Summary:同型胞子シダ植物で最少の染色体数(2 n = 44)を持つシロヤマゼンマイ(Osmunda banksiifolia (Pr.) Kuhn)を培養系に導き,培養した個体を用いて年間を通して体細胞分裂と減数分裂が観察可能な方法を開発し,その教材としての有効性を検討した.胞子を滅菌してペトリ皿の1/2MS寒天培地に播くと,1週間以内に発芽し,約7ヵ月で前葉体に造精器と造卵器が成熟した.また,胞子を播いて約8ヵ月で受精が起こり,若い胞子体が形成され始めた.この若い胞子体を三角フラスコの1/4MS寒天培地に移植したところ,移植後約4ヵ月で胞子葉が形成された.さらに,三角フラスコでそのまま培養を継続したところ,その後約1年間にわたり,新しい胞子葉が約10回形成された.細胞分裂の観察は,新しく伸長した若い根と新しく形成された若い胞子のうを用い,それぞれ押しつぶし法でプレパラートを作製して行った.根では体細胞分裂が観察され,2n = 44が確認できた.胞子のうでは減数分裂が観察され,第一分裂中期では22個の二価染色体が確認できた(2n = 44 = 22 II).以上の結果,シロヤマゼンマイの培養系は,高等学校生物における「細胞」や「生殖と発生」などの実験材料として有効であると考えられる.
ISSN:0287-119X
DOI:10.24718/jjbe.44.2_68