舌圧と栄養状態との関連:歯科外来患者を対象とした横断研究
高齢者の口腔機能低下と低栄養との関連が報告され,歯科診療においても高齢者の低栄養への配慮が求められている。口腔機能のなかでも,舌圧は食物摂取において重要な指標であり,栄養状態との関連が示唆されている。本研究では,歯科医療機関を外来受診した患者の舌圧と栄養状態との関連を明らかにすることを目的とした。対象者は,2018年1月から2020年12月までに,摂食嚥下リハビリテーションを専門とする歯科医療機関を外来受診した,65歳以上の初診患者151名(平均年齢80.5歳,男性95名,女性56名)とした。調査方法は,歯科医師による診療記録を基に,患者の基礎情報,最大舌圧や機能歯数のデータを収集した。また,...
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Published in | 老年歯科医学 Vol. 39; no. 4; pp. 216 - 224 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年歯科医学会
2025
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Subjects | |
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ISSN | 0914-3866 1884-7323 |
DOI | 10.11259/jsg.39.4_216 |
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Summary: | 高齢者の口腔機能低下と低栄養との関連が報告され,歯科診療においても高齢者の低栄養への配慮が求められている。口腔機能のなかでも,舌圧は食物摂取において重要な指標であり,栄養状態との関連が示唆されている。本研究では,歯科医療機関を外来受診した患者の舌圧と栄養状態との関連を明らかにすることを目的とした。対象者は,2018年1月から2020年12月までに,摂食嚥下リハビリテーションを専門とする歯科医療機関を外来受診した,65歳以上の初診患者151名(平均年齢80.5歳,男性95名,女性56名)とした。調査方法は,歯科医師による診療記録を基に,患者の基礎情報,最大舌圧や機能歯数のデータを収集した。また,栄養に関する項目として,低栄養のリスク評価ツールであるMini Nutritional Assessment-Short Form(MNA-SF)のスコアを収集した。解析の結果,舌圧の低下に伴いMNA-SFのスコアも段階的に低くなるという容量反応関係を認めた(傾向性のp値<0.001)。これは,性別や年齢,機能歯数などから独立した関連であった。以上の結果から,歯科診療において,患者の舌圧の経時的な変化を観察し,低栄養のリスクを早期に推測することが重要であると考えられた。舌圧の低下がみられた患者に対し,積極的な栄養介入を行うことで低栄養の予防あるいは改善がみられるか,今後の課題である。 |
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ISSN: | 0914-3866 1884-7323 |
DOI: | 10.11259/jsg.39.4_216 |