脳幹部海綿状血管奇形に対する内視鏡手術
脳幹部海綿状血管奇形(BCM)治療における内視鏡利用の報告は,少数の症例報告に留まっている.内視鏡は,深部でも広く明るい視野が得られることから,深部病変であるBCMに対しても有効と考え,積極的に利用してきた.内視鏡治療を応用したBCM症例 32例(中脳 7例,橋 22例,延髄 3例)を後方視的に検討した.脳幹内部への進入ルートは,2 point methodを基本として主に近傍のsafe entry zoneを利用した.5例で経鼻術,27例で開頭術による摘出が行われた.そのうち25例で,手術corridorの確保目的に細径シリンダーが用いられた.30例(93.8%)でGTRが得られた.術後合併...
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Published in | 脳卒中の外科 Vol. 53; no. 2; pp. 108 - 113 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
2025
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Subjects | |
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ISSN | 0914-5508 1880-4683 |
DOI | 10.2335/scs.53.108 |
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Summary: | 脳幹部海綿状血管奇形(BCM)治療における内視鏡利用の報告は,少数の症例報告に留まっている.内視鏡は,深部でも広く明るい視野が得られることから,深部病変であるBCMに対しても有効と考え,積極的に利用してきた.内視鏡治療を応用したBCM症例 32例(中脳 7例,橋 22例,延髄 3例)を後方視的に検討した.脳幹内部への進入ルートは,2 point methodを基本として主に近傍のsafe entry zoneを利用した.5例で経鼻術,27例で開頭術による摘出が行われた.そのうち25例で,手術corridorの確保目的に細径シリンダーが用いられた.30例(93.8%)でGTRが得られた.術後合併症は5例で認められた.術前平均KPS 62.2に対し,手術3カ月後は84.4であり,改善 26例,不変 5例,悪化 1例であった.また,1例で手術半年後に遅発性パーキンソン症候群を合併し,KPSの低下が認められた.一般的に,BCMに対する外科治療は,顕微鏡下に行われている.本研究における内視鏡下手術の治療成績は,既報と比較して良好な神経予後を示している.内視鏡を用いることで,手術経路の最小化と水中下手術が可能となり,これにより従来にないアプローチ方法を確立することができた.内視鏡の特徴的な手術法である水中での内部観察は,残存病変や止血の確認に非常に有効であった.内視鏡の利用には欠点も存在するため,さまざまな機器の開発,機器操作法の改良を行っている.内視鏡利用は,いまだ発展途上ではあるが,BCMに対する有用性・安全性が支持された. |
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ISSN: | 0914-5508 1880-4683 |
DOI: | 10.2335/scs.53.108 |