極度の歯科恐怖症を有するひきこもり患者に対する全人的アプローチ

ひきこもりとは,さまざまな要因の結果として社会的参加を回避し,原則的には6ヶ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念と定義される.極度の歯科恐怖症を有するひきこもり患者で,治療に対する警戒心が強い症例を経験したが,全人的アプローチを行うことで問題解決した一例を報告する.患者は20歳代,男性,数年前よりパニック障害,うつ,ひきこもりとなり精神科で加療中.歯痛があったが過去の歯科受診で強い恐怖感を抱き,PTSDとなった.痛みが極まりインターネットで全身麻酔下歯科治療を知り,当院に治療依頼があった.ひきこもりで外出できないため,最初は訪問治療を試みるも,拒絶反応として強い嘔気が...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in全人的医療 Vol. 17; no. 1; pp. 54 - 62
Main Authors 今泉, うの, 別部, 智司, 佐藤, 智一, 香川, 恵太, 安田, 美智子, 吉田, 和市
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 国際全人医療研究所 25.03.2019
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1341-7150
2434-687X
DOI10.32183/ifcm.17.1_54

Cover

More Information
Summary:ひきこもりとは,さまざまな要因の結果として社会的参加を回避し,原則的には6ヶ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念と定義される.極度の歯科恐怖症を有するひきこもり患者で,治療に対する警戒心が強い症例を経験したが,全人的アプローチを行うことで問題解決した一例を報告する.患者は20歳代,男性,数年前よりパニック障害,うつ,ひきこもりとなり精神科で加療中.歯痛があったが過去の歯科受診で強い恐怖感を抱き,PTSDとなった.痛みが極まりインターネットで全身麻酔下歯科治療を知り,当院に治療依頼があった.ひきこもりで外出できないため,最初は訪問治療を試みるも,拒絶反応として強い嘔気が起こり,口を開けることができなかった.患者を全人的に身体的,心理的,社会的,実存的に評価して,治療方法を検討した結果,家族の協力を依頼して歯科医院の見学から行い,ラポールの形成に力を注ぐことにした.その結果,患者は徐々に外出できるようになり,麻酔前検査にも来院できるようになった.ついに全身麻酔下での歯科治療を受けることができ,強い歯痛から解放された.現在はこの患者に予防歯科を啓発している.本症例から,極度の歯科恐怖症を持つひきこもり患者の場合には,一般の歯科治療の手法では治療が困難であるため,全身麻酔を用いるという選択肢を考慮する必要があることが考えられた.さらに,再び歯科疾患にならないように,絶え間ない予防啓発が必要と考える.
ISSN:1341-7150
2434-687X
DOI:10.32183/ifcm.17.1_54