飲酒量の相違により障害臓器の違いが示唆されたアルコール性心筋症の1例 アルコール量と臓器障害の関連性

アルコールは心臓や肝臓を含むさまざまな臓器に影響を及ぼす.アルコール性心筋症(alcoholic cardiomyopathy;ACM)は特発性心筋症に類似して左室壁運動低下や左室拡大を示すが,大酒歴があることで区別される.断酒で心機能は改善し,再飲酒で悪化するといわれるが,量を減らして飲み続けた場合の長期予後は明らかではない.また,肝障害との合併についても一定の見解はない.今回われわれは,時期を違えて顕性のACMとアルコール性肝硬変を認めた症例を経験した.患者は,51歳時にACMと診断され,断酒により心機能は改善した.その後,以前の約半量のアルコールを再び飲み始めて15年以上を経て肝硬変をき...

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Published in心臓 Vol. 45; no. 1; pp. 40 - 45
Main Authors 井上, 圭右, 岡村, 幹夫, 寺柿, 政和, 川村, 千佳, 稲荷場, ひろみ, 崔, 吉永, 河野, 仁美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.01.2013
日本心臓財団・日本循環器学会
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.45.40

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Summary:アルコールは心臓や肝臓を含むさまざまな臓器に影響を及ぼす.アルコール性心筋症(alcoholic cardiomyopathy;ACM)は特発性心筋症に類似して左室壁運動低下や左室拡大を示すが,大酒歴があることで区別される.断酒で心機能は改善し,再飲酒で悪化するといわれるが,量を減らして飲み続けた場合の長期予後は明らかではない.また,肝障害との合併についても一定の見解はない.今回われわれは,時期を違えて顕性のACMとアルコール性肝硬変を認めた症例を経験した.患者は,51歳時にACMと診断され,断酒により心機能は改善した.その後,以前の約半量のアルコールを再び飲み始めて15年以上を経て肝硬変をきたしたが,この間にはACMは再燃しなかった.飲酒量が臨床的にACMか肝硬変かを規定する一因になったと推測され,興味深い症例と考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.45.40