成人S状結腸に発生した逆行性腸重積症の1例

成人の逆行性腸重積は非常にまれな疾患である.今回,我々はS状結腸の粘膜内癌を先進部とした逆行性腸重積を生じた1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は45歳の女性で,腹痛を主訴に当院を受診した.腹部CT検査にてS状結腸が下行結腸に逆行性に重積する像を認め,先進部には径3cmの腫瘤影が同定された.S状結腸逆行性腸重積症と診断し,緊急手術を施行した.開腹すると,S状結腸が横行結腸まで逆行性に陥入しており,徒手整復したのち,S状結腸切除,D2郭清を施行した.切除標本ではS状結腸に3cm大の亜有茎性ポリープを認め,組織学的には腺腫成分を伴う中分化腺癌で,深達度pMの診断であった.結腸逆...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 66; no. 3; pp. 162 - 165
Main Authors 野川, 辰彦, 中越, 享, 荻野, 歩, 辻, 孝, 久野, 博, 地引, 政晃
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2013
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.66.162

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Summary:成人の逆行性腸重積は非常にまれな疾患である.今回,我々はS状結腸の粘膜内癌を先進部とした逆行性腸重積を生じた1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は45歳の女性で,腹痛を主訴に当院を受診した.腹部CT検査にてS状結腸が下行結腸に逆行性に重積する像を認め,先進部には径3cmの腫瘤影が同定された.S状結腸逆行性腸重積症と診断し,緊急手術を施行した.開腹すると,S状結腸が横行結腸まで逆行性に陥入しており,徒手整復したのち,S状結腸切除,D2郭清を施行した.切除標本ではS状結腸に3cm大の亜有茎性ポリープを認め,組織学的には腺腫成分を伴う中分化腺癌で,深達度pMの診断であった.結腸逆行性腸重積症の診断にはCTが有用であり,悪性腫瘍を先進部とする頻度が高いことから,手術にあたってはリンパ節郭清を含めた腸切除術を念頭におくべきである.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.66.162