最大海氾濫面形成時期の空間的変化 : 房総半島中部更新統藪層を例として

最大海氾濫面の形成時期が構造運動に対応した相対的海水準上昇速度の地域的な変化にともなって一つの堆積盆の中でも空間的に変化することが, 古東京湾で形成された中部更新統下総層群藪層に認められた.沈降量が小さい地域あるいは隆起域では相対的海水準の上昇速度が小さくなるためより早く海退が始まる.その結果, 他の地域よりも早く最大海氾濫面の形成が行われる.一方, 沈降量が大きい地域では相対的海水準の上昇速度が大きくなるため海退の開始時期が遅れる.藪層の場合, このような最大海氾濫面の形成時期の空間的変化は, 酸素同位体比ステージ10から9にかけての氷河性海水準上昇期の古東京湾東縁部における, 鹿島-房総隆...

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Published in地質学雑誌 Vol. 106; no. 1; pp. 15 - 30
Main Authors 伊藤, 慎, 大原, 隆, 西川, 徹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本地質学会 01.01.2000
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ISSN0016-7630
1349-9963
DOI10.5575/geosoc.106.15

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Summary:最大海氾濫面の形成時期が構造運動に対応した相対的海水準上昇速度の地域的な変化にともなって一つの堆積盆の中でも空間的に変化することが, 古東京湾で形成された中部更新統下総層群藪層に認められた.沈降量が小さい地域あるいは隆起域では相対的海水準の上昇速度が小さくなるためより早く海退が始まる.その結果, 他の地域よりも早く最大海氾濫面の形成が行われる.一方, 沈降量が大きい地域では相対的海水準の上昇速度が大きくなるため海退の開始時期が遅れる.藪層の場合, このような最大海氾濫面の形成時期の空間的変化は, 酸素同位体比ステージ10から9にかけての氷河性海水準上昇期の古東京湾東縁部における, 鹿島-房総隆起帯にともなう隆起・沈降運動の大きさの地域的な変化によって発生したと考えられる.すなわち, 鹿島-房総隆起帯に沿う地域では古東京湾中央部の沈降域よりも早く最大海氾濫面の形成が行われていたことが明らかとなった.
ISSN:0016-7630
1349-9963
DOI:10.5575/geosoc.106.15