シンナー常用者に発症した重症急性肝障害の1例

シンナー常用者に発症した重症急性肝障害の1例を経験したので報告する.症例は16歳男性で,輸血歴・飲酒歴・薬物乱用歴はない.平成元年4月頃よりシンナーの吸入を始めていたが,同年6月吸入した直後より悪心・嘔吐・発熱を来して来院.入院時,比較的重症の肝障害を認めたが,各種ウイルスマーカーは陰性であった.経過は良好で,約3週間後には肝機能は正常化した.腹部超音波検査にて肝腎コントラストの増強がみられたが,肝機能の正常化とともに改善した.尿中より馬尿酸及びメチル馬尿酸を検出し,吸入したシンナーの主成分はトルエンであると推定された.第18病日に施行した肝生検では,小葉中心性の壊死及び出血が特徴的で,門脈域...

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Published in肝臓 Vol. 31; no. 11; pp. 1343 - 1347
Main Authors 杉村, 隆史, 田中, 晃, 名和田, 新, 辻, 裕二, 坂本, 茂, 二宮, 謙一, 井林, 博, 三村, 和郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 1990
Subjects
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.31.1343

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Summary:シンナー常用者に発症した重症急性肝障害の1例を経験したので報告する.症例は16歳男性で,輸血歴・飲酒歴・薬物乱用歴はない.平成元年4月頃よりシンナーの吸入を始めていたが,同年6月吸入した直後より悪心・嘔吐・発熱を来して来院.入院時,比較的重症の肝障害を認めたが,各種ウイルスマーカーは陰性であった.経過は良好で,約3週間後には肝機能は正常化した.腹部超音波検査にて肝腎コントラストの増強がみられたが,肝機能の正常化とともに改善した.尿中より馬尿酸及びメチル馬尿酸を検出し,吸入したシンナーの主成分はトルエンであると推定された.第18病日に施行した肝生検では,小葉中心性の壊死及び出血が特徴的で,門脈域には著変を認め得なかった.有機溶剤により重篤な肝障害を来した報告は稀であり,興味ある症例と考え報告した.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.31.1343