淡水湖「北浦」の沿岸帯における繁殖期のシラウオ成魚の生息環境特性

シラウオ(Salangichthys microdon)は河口域、海跡湖、潟湖などの汽水域に主に生息する汽水魚である。防潮水門によって淡水化された複数の海跡湖には陸封個体群が出現し、地域漁業の対象となっているが、淡水域での本種の生態に関する知見は少ない。本研究では淡水域における産卵期の本種成魚の生息環境特性を明らかにするため、2017年と2018年の早春に、淡水湖の北浦の沿岸帯(水深約0.5–1 m)で小型地曳網による採集調査を実施したところ、2017年に368個体(体長58–80 mm)、2018年に196個体(体長59–88 mm)が採集された。それらの大半が雄であり、産卵場周辺への集群が...

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Published in水生動物 Vol. 2025; p. AA2025-26
Main Authors 岡本 悠, 石塚 隆寛, 碓井 星二, 山崎 和哉, 加納 光樹, 大森 健策
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published アクオス研究所 07.07.2025
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ISSN2434-8643
DOI10.34394/aquaticanimals.2025.0_AA2025-26

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Summary:シラウオ(Salangichthys microdon)は河口域、海跡湖、潟湖などの汽水域に主に生息する汽水魚である。防潮水門によって淡水化された複数の海跡湖には陸封個体群が出現し、地域漁業の対象となっているが、淡水域での本種の生態に関する知見は少ない。本研究では淡水域における産卵期の本種成魚の生息環境特性を明らかにするため、2017年と2018年の早春に、淡水湖の北浦の沿岸帯(水深約0.5–1 m)で小型地曳網による採集調査を実施したところ、2017年に368個体(体長58–80 mm)、2018年に196個体(体長59–88 mm)が採集された。それらの大半が雄であり、産卵場周辺への集群が示唆された。成魚の個体数密度を目的変数、各環境変量(水温、溶存酸素量、濁度、水深、波高、底質の中央粒径、ヨシ帯の有無)を説明変数として一般化線形混合モデル解析を実施したところ、成魚は水深と波高がより大きく底質の中央粒径が125–500 µmの場所で多いことが示された。したがって、淡水湖の沿岸帯では波浪の影響が及ぶ砂地が本種成魚の重要な生息場所の一つとなっていると考えられた。本種の自然再生産の維持を図るために、そのような環境を保全していくことが望まれる。
ISSN:2434-8643
DOI:10.34394/aquaticanimals.2025.0_AA2025-26