慢性術後痛の予防的観点から術後疼痛管理の未来を考える 継続的な疼痛管理とチーム医療の必要性

「はじめに」術後痛という用語は, 手術直後の痛みから遷延化した慢性の痛みまで, 広い範囲で使用されている. 一方で近年, 急性痛と慢性疼痛を全く別のものとして扱う風潮にあるが, 術後痛や外傷後痛, 帯状疱疹関連痛などに関しては, 同一患者がそれぞれの時期に経験する「不快な感覚と情動体験」である. そのため理想的には連続性のある治療やケアが望まれる. しかし, 現状では周術期の急性痛に対しても十分な疼痛緩和ができない環境に置かれている場合もあり, さらに本邦においては, 亜急性期痛が遷延し慢性化した状態でペインクリニックや痛みセンターを受診することも多い. 術後痛の多くが組織修復の過程で消失する...

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Published inPAIN RESEARCH Vol. 35; no. 1; pp. 1 - 9
Main Authors 井関, 雅子, 河合, 愛子, 千葉, 聡子, 原, 厚子, 濱岡, 早枝子, 山口, 敬介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本疼痛学会 31.03.2020
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ISSN0915-8588
2187-4697
DOI10.11154/pain.35.1

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Summary:「はじめに」術後痛という用語は, 手術直後の痛みから遷延化した慢性の痛みまで, 広い範囲で使用されている. 一方で近年, 急性痛と慢性疼痛を全く別のものとして扱う風潮にあるが, 術後痛や外傷後痛, 帯状疱疹関連痛などに関しては, 同一患者がそれぞれの時期に経験する「不快な感覚と情動体験」である. そのため理想的には連続性のある治療やケアが望まれる. しかし, 現状では周術期の急性痛に対しても十分な疼痛緩和ができない環境に置かれている場合もあり, さらに本邦においては, 亜急性期痛が遷延し慢性化した状態でペインクリニックや痛みセンターを受診することも多い. 術後痛の多くが組織修復の過程で消失する疼痛であっても, 急性痛を速やかに軽減させることは, 患者に対する心身の苦痛を最低限にして周術期の生活の質を向上させることにつながり, 疼痛の遷延化の予防にも繋がる可能性がある. したがって今後は急性期から慢性期まで途切れのない心身のケアも含めた術後疼痛管理を, チーム医療で施行することが切望される.
ISSN:0915-8588
2187-4697
DOI:10.11154/pain.35.1