肝細胞と胆管細胞の2方向への形質分化を示した肝原発未分化癌の1例

症例は56歳の男性で, B型慢性肝炎と診断されていた. 画像検査の結果, 肝右葉後区域に6cm大の腫瘤を認めたため未治療のまま肝切除が行われた. 病理組織像では多核の巨細胞を交える紡錘形細胞が密に増殖する肉腫様変化を認めた. 腫瘍細胞の起源を免疫組織学的に検索すると, cytokeratin 陽性および vimentin 陰性で上皮性の性格を発現しており, 真の肉腫は否定的であった. さらに, 肝細胞と胆管細胞のマーカー陽性を示す細胞が散在性に認められたことから, 肝細胞と胆管細胞の2方向への形質分化を示した肝原発未分化癌と診断した. 肝細胞癌あるいは胆管細胞癌から他の組織型への明らかな移行像...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in肝臓 Vol. 45; no. 12; pp. 678 - 683
Main Authors 大塚, 俊美, 永井, 佳世子, 福羅, 匡普, 高瀬, 修二郎, 土島, 睦, 川原, 弘, 島中, 公志, 橋本, 昌子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 25.12.2004
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.45.678

Cover

More Information
Summary:症例は56歳の男性で, B型慢性肝炎と診断されていた. 画像検査の結果, 肝右葉後区域に6cm大の腫瘤を認めたため未治療のまま肝切除が行われた. 病理組織像では多核の巨細胞を交える紡錘形細胞が密に増殖する肉腫様変化を認めた. 腫瘍細胞の起源を免疫組織学的に検索すると, cytokeratin 陽性および vimentin 陰性で上皮性の性格を発現しており, 真の肉腫は否定的であった. さらに, 肝細胞と胆管細胞のマーカー陽性を示す細胞が散在性に認められたことから, 肝細胞と胆管細胞の2方向への形質分化を示した肝原発未分化癌と診断した. 肝細胞癌あるいは胆管細胞癌から他の組織型への明らかな移行像を認めず, 両者が混在して存在する組織所見を考慮すると, 肝細胞と胆管細胞への2方向へ分化する前駆細胞 (bipotential progenitor cell) の腫瘍化に伴ってさらに多方向への分化能を獲得し, その結果として肉腫様変化を来した可能性が考えられた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.45.678