胃粘液様物質を産生する杯細胞型細気管支肺胞上皮癌の1切除例

患者は, 76歳, 女性.9年前に胃癌の手術歴があった.今回, S状結腸ポリープの精査加療中, 咳嗽を認め, 胸部X線写真で左肺野の淡い浸潤影を指摘された.肺炎を疑われ, 抗生剤投与による内科治療の後, 3ヵ月後の再検査で浸潤影の増大と腫瘍マーカーの高値を認めたことから, 気管支鏡下の擦過細胞診を施行したところ肺腺癌と診断された.手術は, 左肺上葉切除術, 縦隔郭清を施行した.病理診断は, 粘液産生型の細気管支肺胞上皮癌 (杯細胞型) (BAC) であった.胃粘膜上皮様の組織形態を呈したことから, さらに粘液組織化学的検討を加えたところ, 癌細胞内粘液は, 正常胃の粘液細胞が分泌する粘液と粘液...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 14; no. 6; pp. 720 - 725
Main Authors 関, 龍幸, 花岡, 孝臣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 15.09.2000
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.14.720

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Summary:患者は, 76歳, 女性.9年前に胃癌の手術歴があった.今回, S状結腸ポリープの精査加療中, 咳嗽を認め, 胸部X線写真で左肺野の淡い浸潤影を指摘された.肺炎を疑われ, 抗生剤投与による内科治療の後, 3ヵ月後の再検査で浸潤影の増大と腫瘍マーカーの高値を認めたことから, 気管支鏡下の擦過細胞診を施行したところ肺腺癌と診断された.手術は, 左肺上葉切除術, 縦隔郭清を施行した.病理診断は, 粘液産生型の細気管支肺胞上皮癌 (杯細胞型) (BAC) であった.胃粘膜上皮様の組織形態を呈したことから, さらに粘液組織化学的検討を加えたところ, 癌細胞内粘液は, 正常胃の粘液細胞が分泌する粘液と粘液組織化学的に同質のものであることが示され, BACが胃の被覆上皮へ機能分化していることが示唆された.自験例は, 粘液産生型BACの癌形成や治療方針を考える上で, 大変興味深い症例と思われたので報告した.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.14.720