肝硬変を合併した肝右葉欠損症の1例

症例は65歳, 男性. 5合/日, 40年間の飲酒歴あり, 輸血歴. 1996年10月, 睾丸水腫のため当院泌尿器科を受診, 血小板減少を指摘され当科紹介となる. 入院時検査では白血球および血小板数の減少, 軽度の肝機能障害があり, 脾腫, 食道静脈瘤を認めたことから, 特発性門脈圧亢進症などが考えられた. 腹部エコー, CT像では肝右葉の欠損が疑われ, 腹部血管造影像では, 腹部大動脈, 腹腔動脈, 上腸間膜動脈からの造影で右肝動脈は造影されず, 門脈造影で門脈右枝は描出されなかったが, 下大静脈および肝静脈の閉塞所見はなかった. 腹腔鏡像では, 肝鎌状靱帯の右側に右葉は観察されず, 腫大し...

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Published in肝臓 Vol. 39; no. 11; pp. 820 - 825
Main Authors 松田, 隆昭, 植村, 正人, 奥, 和美, 高木, 正博, 上田, 重彦, 松本, 昌美, 福井, 博, 藤本, 正男, 小嶌, 秀之, 安, 辰一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 25.11.1998
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.39.820

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Summary:症例は65歳, 男性. 5合/日, 40年間の飲酒歴あり, 輸血歴. 1996年10月, 睾丸水腫のため当院泌尿器科を受診, 血小板減少を指摘され当科紹介となる. 入院時検査では白血球および血小板数の減少, 軽度の肝機能障害があり, 脾腫, 食道静脈瘤を認めたことから, 特発性門脈圧亢進症などが考えられた. 腹部エコー, CT像では肝右葉の欠損が疑われ, 腹部血管造影像では, 腹部大動脈, 腹腔動脈, 上腸間膜動脈からの造影で右肝動脈は造影されず, 門脈造影で門脈右枝は描出されなかったが, 下大静脈および肝静脈の閉塞所見はなかった. 腹腔鏡像では, 肝鎌状靱帯の右側に右葉は観察されず, 腫大した左葉の表面には大小不同の結節を認めた. 以上より, 肝硬変を合併した肝右葉欠損症と診断した. 肝右葉欠損症はまれな疾患であり, 本邦では胆道疾患などとの合併例が報告されているが, 肝硬変合併の報告はなく, 本症例はきわめてまれな1例と考えられた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.39.820