難治性腹水に経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術を施行した維持透析中の肝硬変症の1例

症例は61歳の男性, 維持透析中のアルコール性肝硬変患者で, 週2回, 毎回7リットルの穿刺排液を必要とする難治性腹水があり, 腹水濃縮静脈内再注入でもコントロール不良であったため, 経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術 (Transjugular intrahepatic portosystemic shunt; TIPS) を行ったが, 腹水は著明に改善したものの肝不全が進行し死亡した. 肝ネクロプシーでは, 完成された小結節性肝硬変に加えて多発性巣状の凝固壊死を認め, アルコール性肝硬変にさらに虚血性の肝細胞壊死が加わった所見と考えられた. 難治性腹水は本法の適応の1つとされているが, 効果は必...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in肝臓 Vol. 38; no. 11; pp. 673 - 677
Main Authors 前川, 伸哉, 田沢, 潤一, 山本, 力, 佐藤, 千史, 草野, 史彦, 佐久間, 郁行, 酒井, 義法, 前田, 学, 鈴木, 恵子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 25.11.1997
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.38.673

Cover

More Information
Summary:症例は61歳の男性, 維持透析中のアルコール性肝硬変患者で, 週2回, 毎回7リットルの穿刺排液を必要とする難治性腹水があり, 腹水濃縮静脈内再注入でもコントロール不良であったため, 経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術 (Transjugular intrahepatic portosystemic shunt; TIPS) を行ったが, 腹水は著明に改善したものの肝不全が進行し死亡した. 肝ネクロプシーでは, 完成された小結節性肝硬変に加えて多発性巣状の凝固壊死を認め, アルコール性肝硬変にさらに虚血性の肝細胞壊死が加わった所見と考えられた. 難治性腹水は本法の適応の1つとされているが, 効果は必ずしも一定していない. さらにTIPS施行後の予後に関しても必ずしも良いとはいえない. また本邦では維持透析中の肝硬変症患者における難治性腹水に対して本法を施行したという報告はない.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.38.673