内視鏡的粘膜切除後の広範囲気腫症に対して外科的治療を選択した直腸穿孔の1例

症例は86歳,女性.直腸腫瘍を指摘され, 2005年5月16日にEMR施行した.その際,切除部において深い切開となったため,腸穿孔を疑い,絶食とし,点滴を行い,抗生剤を投与した. EMR後は腹痛はなく, vital signには著変は認められなかったが,血液検査にて白血球およびCRPの上昇が認められた.翌日の腹部・胸部CTにおいて,骨盤内,後腹膜,縦隔と腹部~頸部の皮下気腫症が認められ,内視鏡治療による直腸穿孔で生じた広範囲気腫症と診断した.本症例は高齢で心疾患を合併しており,今後の全身状態悪化・気腫の悪化の可能性が否定できないことを考慮し, 5月19日,緊急手術を施行した.手術所見では,便性...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 67; no. 5; pp. 1062 - 1068
Main Authors 谷崎, 裕志, 金澤, 卓
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.05.2006
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.67.1062

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Summary:症例は86歳,女性.直腸腫瘍を指摘され, 2005年5月16日にEMR施行した.その際,切除部において深い切開となったため,腸穿孔を疑い,絶食とし,点滴を行い,抗生剤を投与した. EMR後は腹痛はなく, vital signには著変は認められなかったが,血液検査にて白血球およびCRPの上昇が認められた.翌日の腹部・胸部CTにおいて,骨盤内,後腹膜,縦隔と腹部~頸部の皮下気腫症が認められ,内視鏡治療による直腸穿孔で生じた広範囲気腫症と診断した.本症例は高齢で心疾患を合併しており,今後の全身状態悪化・気腫の悪化の可能性が否定できないことを考慮し, 5月19日,緊急手術を施行した.手術所見では,便性の腹水は認めず, S状結腸間膜に気腫性の変化を認めた.穿孔部は,腹膜反転部やや肛門側左壁に認められ,反転部の直腸左壁から前面にかけて炎症が広がっていた.穿孔部周囲を剥離し,直腸切除術を施行した.術後,全身皮下気腫はすぐに消失した.術後34日目に退院し,現在元気に外来通院中である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.67.1062