門脈ガス血症を呈したCrohn病による単純性小腸イレウスの1例

症例は46歳,男性. 2年前からCrohn病の診断にてメサラジンを内服していたが最近は自己判断で中止していた.今回は右下腹部痛を主訴に当院救急外来を受診した.来院時,右下腹部を中心に強い腹膜刺激症状を認め,腹部単純X線検査で腹部全体に小腸イレウスを疑わせるガス像を認めた.また腹部CTで肝全域に及ぶ門脈内ガス像を認めた.門脈ガス血症を伴ったイレウスの診断にて緊急開腹術を施行した.手術所見では回腸末端の壁肥厚と狭窄,小腸間の穿通を認めたが,壊死腸管や腸管の虚血性変化などは認めなかった.小腸部分切除術のみを行ったが,病理組織学的診断はCrohn病であった.以上より門脈ガス血症を伴ったCrohn病によ...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 66; no. 5; pp. 1058 - 1062
Main Authors 柴田, 直史, 成田, 洋, 小林, 建司, 加藤, 克己, 早川, 哲史, 田中, 守嗣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.05.2005
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.66.1058

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Summary:症例は46歳,男性. 2年前からCrohn病の診断にてメサラジンを内服していたが最近は自己判断で中止していた.今回は右下腹部痛を主訴に当院救急外来を受診した.来院時,右下腹部を中心に強い腹膜刺激症状を認め,腹部単純X線検査で腹部全体に小腸イレウスを疑わせるガス像を認めた.また腹部CTで肝全域に及ぶ門脈内ガス像を認めた.門脈ガス血症を伴ったイレウスの診断にて緊急開腹術を施行した.手術所見では回腸末端の壁肥厚と狭窄,小腸間の穿通を認めたが,壊死腸管や腸管の虚血性変化などは認めなかった.小腸部分切除術のみを行ったが,病理組織学的診断はCrohn病であった.以上より門脈ガス血症を伴ったCrohn病による単純性イレウスと最終診断した.術後経過は順調で第1病日には門脈内ガスは消失,第19病日に退院した. Crohn病を背景にした門脈ガス血症の報告は極めて稀で本邦では自験例を含め2例のみであった.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.66.1058