S状結腸癌の口側穿通から生じた腸間膜膿瘍の1例

症例は70歳,女性.腹痛,嘔吐を主訴に来院した.腹部単純X線で骨盤腔内に巨大なガス像を,注腸造影ではS状結腸に狭窄を認めこの口側より単純X線でのガス像に相当する部分が造影され,遊離腹腔内への漏出を認めた.腹膜刺激症状が出現し,ショック状態となったため,来院より3時間後,緊急手術を行った.腹腔内には糞臭を伴う腹水を認め,S状結腸間膜が膨隆し小児頭大の腫瘤を形成し,この肛門側には大腸癌を認めた. Hartmann手術を施行した.病理組織学的には腸間膜側中心深達度ssの2型高分化型腺癌,およびこの同側約2cm口側に径5.5cmの穿通部を認め,腸間膜膿瘍の内容量は約1,000mlであった.穿通部肛門側...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 60; no. 5; pp. 1393 - 1397
Main Authors 重松, 恭祐, 真鍋, 貴子, 太田, 正穂, 高村, 光一, 岡本, 史樹, 桂川, 秀雄, 中村, 明央, 菊池, 友允, 粟根, 康行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.05.1999
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.60.1393

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Summary:症例は70歳,女性.腹痛,嘔吐を主訴に来院した.腹部単純X線で骨盤腔内に巨大なガス像を,注腸造影ではS状結腸に狭窄を認めこの口側より単純X線でのガス像に相当する部分が造影され,遊離腹腔内への漏出を認めた.腹膜刺激症状が出現し,ショック状態となったため,来院より3時間後,緊急手術を行った.腹腔内には糞臭を伴う腹水を認め,S状結腸間膜が膨隆し小児頭大の腫瘤を形成し,この肛門側には大腸癌を認めた. Hartmann手術を施行した.病理組織学的には腸間膜側中心深達度ssの2型高分化型腺癌,およびこの同側約2cm口側に径5.5cmの穿通部を認め,腸間膜膿瘍の内容量は約1,000mlであった.穿通部肛門側には主病巣から連続する非特異的な急性炎症像を認めた.大腸穿孔例で腸間膜側への穿通は稀であるが,腹膜刺激症状に乏しい腹痛,発熱に肝,胆道系の所見が加わった症例では本疾患が鑑別疾患のひとつになるものと思われた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.60.1393