下腹部白線ヘルニアの1例

症例は42歳,女性. 2年前に経膣的子宮全摘術の既往がある.下腹部腫瘤を主訴として当科受診.臍下部正中に約3cm大の柔らかい腫瘤を触知し,用手的に容易に還納した.超音波検査および腹部CT検査では,下腹部正中皮下に白線腱膜の欠損部より脱出する約3cm大の大網と思われる腫瘤を認めた.以上より下部白線ヘルニアの診断で手術を施行した.ヘルニア周囲を剥離すると腹膜前脂肪とヘルニア嚢を認めた.ヘルニア嚢を切除,ヘルニア門を縫合閉鎖し根治術を施行した.術後2年経過した現在,再発を認めていない.白線ヘルニアは稀な疾患で,本邦では自験例を含めて66例の報告しかなく,その中で下腹部白線ヘルニアはわずかに7例のみで...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 64; no. 8; pp. 2037 - 2040
Main Authors 鎌野, 俊紀, 松田, 光弘, 鶴岡, 優子, 菅野, 雅彦, 坂本, 一博, 鶴丸, 昌彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.08.2003
Subjects
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.64.2037

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Summary:症例は42歳,女性. 2年前に経膣的子宮全摘術の既往がある.下腹部腫瘤を主訴として当科受診.臍下部正中に約3cm大の柔らかい腫瘤を触知し,用手的に容易に還納した.超音波検査および腹部CT検査では,下腹部正中皮下に白線腱膜の欠損部より脱出する約3cm大の大網と思われる腫瘤を認めた.以上より下部白線ヘルニアの診断で手術を施行した.ヘルニア周囲を剥離すると腹膜前脂肪とヘルニア嚢を認めた.ヘルニア嚢を切除,ヘルニア門を縫合閉鎖し根治術を施行した.術後2年経過した現在,再発を認めていない.白線ヘルニアは稀な疾患で,本邦では自験例を含めて66例の報告しかなく,その中で下腹部白線ヘルニアはわずかに7例のみである.自験例は生理的な白線の脆弱に加え,妊娠および出産による腹圧上昇と手術がヘルニア発生の誘因と考えられた.白線ヘルニアの中でも稀な下腹部白線ヘルニアの1例を経験したので本邦報告例の検討を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.64.2037