胸骨後経路胃管再建による食道癌術後狭心症に対する左開胸下冠動脈バイパス術の1例

症例は58歳,男性.脳梗塞にて入院した際心電図上冠動脈疾患を疑われた.心臓カテーテル検査の結果,3枝病変を認め手術目的にて当科入院となった.本例は47歳時,食道癌のため胸骨後経路胃管再建による根治術を受けており,胸骨正中切開は困難と考え左開胸下に人工心肺を用い手術を施行した.左内胸動脈は再建胃管の癒着が強固で剥離できないため左橈骨動脈をY-グラフトとした.鈍縁枝は心筋内走行をしていることから,上行大動脈遮断,心停止下に左前下行枝,鈍縁枝へ吻合し,中枢側は上行大動脈に吻合した.右冠動脈は露出が難しく血行再建は行わなかったが,術後経過はとくに問題なく術後17日目に軽快退院した.左開胸下冠動脈バイパ...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 32; no. 5; pp. 276 - 279
Main Authors 南村, 弘佳, 石川, 巧, 西, 宏之, 加藤, 泰之, 清水, 幸宏, 宮本, 覚, 村上, 忠弘, 大上, 賢祐
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.09.2003
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.32.276

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Summary:症例は58歳,男性.脳梗塞にて入院した際心電図上冠動脈疾患を疑われた.心臓カテーテル検査の結果,3枝病変を認め手術目的にて当科入院となった.本例は47歳時,食道癌のため胸骨後経路胃管再建による根治術を受けており,胸骨正中切開は困難と考え左開胸下に人工心肺を用い手術を施行した.左内胸動脈は再建胃管の癒着が強固で剥離できないため左橈骨動脈をY-グラフトとした.鈍縁枝は心筋内走行をしていることから,上行大動脈遮断,心停止下に左前下行枝,鈍縁枝へ吻合し,中枢側は上行大動脈に吻合した.右冠動脈は露出が難しく血行再建は行わなかったが,術後経過はとくに問題なく術後17日目に軽快退院した.左開胸下冠動脈バイパス術は胸骨正中切開がより困難な食道癌術後症例であっても左冠動脈の露出が容易であり,再建胃管損傷の危険も少なく適切であると考えられたが,症例に応じて開胸部位,補助手段,使用グラフト,中枢側吻合部位を選択することが必要と考えられた.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.32.276