胃全摘後気管支喘息が消失した多発性胃カルチノイド腫瘍の1例

症例は62歳,女性.内視鏡検査にて胃体上部から中部にかけてA型胃炎を,胃体上部に山田III型の小隆起の多発を認め,生検でカルチノイドと診断した. 60歳時初発の気管支喘息を併存していた.尿中5-HIAA, 血中セロトニンは正常であった.個々の腫瘍は微小でEMRで切除可能と思われたが,背景にA型胃炎があり多発性であること,早期に粘膜下層に浸潤する本症の性質を考慮し胃全摘術を施行した.術後気管支喘息は消失した. 自験例の腫瘍は抗ヒスタミン抗体陽性で,併存した気管支喘息は腫瘍由来であった可能性があるが,腫瘍は微小であり, A型胃炎にともなう高ガストリン血症が内分泌細胞微小胞巣を刺激してヒスタミン産生...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 60; no. 4; pp. 989 - 993
Main Authors 竹村, 隆夫, 松田, 実, 土肥, 直樹, 和田, 知可志, 河野, 修三, 山崎, 洋次
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.04.1999
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.60.989

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Summary:症例は62歳,女性.内視鏡検査にて胃体上部から中部にかけてA型胃炎を,胃体上部に山田III型の小隆起の多発を認め,生検でカルチノイドと診断した. 60歳時初発の気管支喘息を併存していた.尿中5-HIAA, 血中セロトニンは正常であった.個々の腫瘍は微小でEMRで切除可能と思われたが,背景にA型胃炎があり多発性であること,早期に粘膜下層に浸潤する本症の性質を考慮し胃全摘術を施行した.術後気管支喘息は消失した. 自験例の腫瘍は抗ヒスタミン抗体陽性で,併存した気管支喘息は腫瘍由来であった可能性があるが,腫瘍は微小であり, A型胃炎にともなう高ガストリン血症が内分泌細胞微小胞巣を刺激してヒスタミン産生を促し,気管支喘息を誘発した可能性も考えられた. 検索し得た限り,併存した気管支喘息が手術後に消失した胃カルチノイドの報告例はなく,自験例は貴重な症例と思われた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.60.989