腹部を蹴られ空腸離断をきたした腹部鈍的外傷の1例

人力による腹部鈍的外傷で空腸離断をきたした症例を経験した. 症例は69歳・男性で, 仰臥位の状態で腹部を4回踵で蹴られ, 腹痛を主訴に来院した. 来院時は酒酔い状態で腹部全体に疼痛を訴えていたが, 腹膜刺激症状はなく, 血液生化学検査, 単純X線検査, CT検査でも異常所見は認めなかった. 受傷8時間後に腹膜刺激症状が出現し, 諸検査の結果, 穿孔性腹膜炎の診断で受傷11時間後に緊急開腹手術を施行した. Treitz靱帯から45cmの部位で空腸が離断しており, 他に損傷部位は認めず, 空腸離断部断端切除後, 端端吻合, 吻合部口側でのtube jejunostomy, 腹腔内洗浄ドレナージを施...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 23; no. 7; pp. 1087 - 1090
Main Authors 豊沢, 忠, 土岐, 朋子, 高橋, 誠, 武藤, 高明, 小笠原, 猛, 守屋, 智之, 小林, 國力, 大塚, 恭寛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 30.11.2003
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem1993.23.1087

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Summary:人力による腹部鈍的外傷で空腸離断をきたした症例を経験した. 症例は69歳・男性で, 仰臥位の状態で腹部を4回踵で蹴られ, 腹痛を主訴に来院した. 来院時は酒酔い状態で腹部全体に疼痛を訴えていたが, 腹膜刺激症状はなく, 血液生化学検査, 単純X線検査, CT検査でも異常所見は認めなかった. 受傷8時間後に腹膜刺激症状が出現し, 諸検査の結果, 穿孔性腹膜炎の診断で受傷11時間後に緊急開腹手術を施行した. Treitz靱帯から45cmの部位で空腸が離断しており, 他に損傷部位は認めず, 空腸離断部断端切除後, 端端吻合, 吻合部口側でのtube jejunostomy, 腹腔内洗浄ドレナージを施行した. 術後創感染, 腹壁創開を併発し再縫合を要した以外は経過良好で第40病日に退院した. 外傷性小腸損傷は, 腹壁自体の打撲による疼痛のために, 初期の腹膜刺激症状が判断しがたく, 他の要素からも早期診断が困難な例が多いが, 本症例では経時的な観察と検査により早期の治療が可能であった. また, 本症例は人力による受傷, そして単独の空腸離断という点で比較的まれな症例と思われた.
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem1993.23.1087