漏出性胆汁性腹膜炎の1手術例

症例は83歳。男性。腹痛, 嘔吐を主訴に来院した。急性腸炎の疑いにて保存的治療を施行したが, 上腹部に筋性防御が出現したため, 再度腹部CTを施行したところ肝周囲に腹水を認めた。十二指腸潰瘍穿孔と診断し緊急開腹手術を施行した。腹腔内には清澄な胆汁性腹水が貯留していたが, 腹腔内臓器に穿孔を疑わせる所見は認めなかった。胆嚢摘出術および総胆管切開, T-tubeドレナージを施行した。組織学的には胆嚢壁は菲薄化し粘膜上皮の欠落と筋層まで陥入したRokitansky-Aschoff sinusを所々に認めた。出血, 壊死, 血栓形成は認めず, 漏出性胆汁性腹膜炎と考えられた。本症例では穿孔部がないこと...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 24; no. 6; pp. 1059 - 1062
Main Authors 篠原, 靖志, 坂本, 昭雄, 近藤, 悟, 佐藤, 治夫, 首藤, 潔彦, 北林, 宏之, 落合, 武徳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 30.09.2004
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem1993.24.1059

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Summary:症例は83歳。男性。腹痛, 嘔吐を主訴に来院した。急性腸炎の疑いにて保存的治療を施行したが, 上腹部に筋性防御が出現したため, 再度腹部CTを施行したところ肝周囲に腹水を認めた。十二指腸潰瘍穿孔と診断し緊急開腹手術を施行した。腹腔内には清澄な胆汁性腹水が貯留していたが, 腹腔内臓器に穿孔を疑わせる所見は認めなかった。胆嚢摘出術および総胆管切開, T-tubeドレナージを施行した。組織学的には胆嚢壁は菲薄化し粘膜上皮の欠落と筋層まで陥入したRokitansky-Aschoff sinusを所々に認めた。出血, 壊死, 血栓形成は認めず, 漏出性胆汁性腹膜炎と考えられた。本症例では穿孔部がないことを除けば臨床的には特発性胆嚢穿孔と一致している。胆汁漏出の原因としては, 胆嚢壁が菲薄化したことと陥入したR-Asinusを通し胆汁が漿膜側へ浸透していった機序が考えられた。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem1993.24.1059