過去15年間におけるA型急性肝炎252例の臨床,疫学的検討による最近の動向
当院に1980年から1994年12月までの15年間に入院したA型急性肝炎患者252例を対象としてretrospectiveに検討し,その背景因子,臨床的特徴を解析した.A型急性肝炎の発生年度には明らかに周期性があり,過去15年間で1990年が最も多く,最近5年間に増加傾向が認められた.近年好発年齢が高齢化し,女性の占める割合が増加する傾向がみられた.肝機能成績の特徴として最近5年間の症例の血清GPT最高値はそれ以前と比べて有意に高値であった.A型急性肝炎発症後,GPT高値が3ヵ月以上最長7ヵ月持続した遷延例が6例認められたが,慢性肝炎に移行した症例はみられなかった.プロトロンビン時間40%以下...
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Published in | 肝臓 Vol. 37; no. 4; pp. 200 - 207 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本肝臓学会
25.04.1996
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Subjects | |
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ISSN | 0451-4203 1881-3593 |
DOI | 10.2957/kanzo.37.200 |
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Summary: | 当院に1980年から1994年12月までの15年間に入院したA型急性肝炎患者252例を対象としてretrospectiveに検討し,その背景因子,臨床的特徴を解析した.A型急性肝炎の発生年度には明らかに周期性があり,過去15年間で1990年が最も多く,最近5年間に増加傾向が認められた.近年好発年齢が高齢化し,女性の占める割合が増加する傾向がみられた.肝機能成績の特徴として最近5年間の症例の血清GPT最高値はそれ以前と比べて有意に高値であった.A型急性肝炎発症後,GPT高値が3ヵ月以上最長7ヵ月持続した遷延例が6例認められたが,慢性肝炎に移行した症例はみられなかった.プロトロンビン時間40%以下の重症型が最近2年間に集中して6例認められ,その特徴として男性,高齢であることが指摘された.重症型では血清GPT, T. Bil最高値は非重症型に比較して有意に高値で,1例が劇症肝炎に移行したが救命された.以上より,A型急性肝炎の最近の動向として好発年齢の高齢化,女性例の増加,重症型の出現がみられ,その臨床像および病態の変化が示唆された. |
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ISSN: | 0451-4203 1881-3593 |
DOI: | 10.2957/kanzo.37.200 |