高エンドトキシン血症対策が有効であったアルコール性肝硬変に合併したspur cell anemiaの1生存例

症例は53歳男性.30年来の大酒家で,近医にてアルコール性肝硬変と診断され加療を続けていたが,黄疸が増強し腹水,浮腫も出現したため当科入院となった.持続する黄疸と溶血性貧血を呈し,末梢血塗抹標本で赤血球の約30%に有棘赤血球を認め,赤血球膜脂質分析では,遊離コレステロール/リン脂質比の増加がみられたため,本症例はアルコール性肝硬変に合併したspur cell anemiaと診断した.経過中,皮下出血斑の出現とともに高エンドトキシン血症を呈し,disseminated intravascular coagulopathy (DIC)の合併が危惧されたため,ポリミキシンBおよびカナマイシンの投与を...

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Published in肝臓 Vol. 35; no. 9; pp. 689 - 695
Main Authors 日野, いずみ, 戸田, 剛太郎, 山内, 眞義, 安澤, 龍宏, 佐藤, 俊哉, 法橋, 建
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 1994
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.35.689

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Summary:症例は53歳男性.30年来の大酒家で,近医にてアルコール性肝硬変と診断され加療を続けていたが,黄疸が増強し腹水,浮腫も出現したため当科入院となった.持続する黄疸と溶血性貧血を呈し,末梢血塗抹標本で赤血球の約30%に有棘赤血球を認め,赤血球膜脂質分析では,遊離コレステロール/リン脂質比の増加がみられたため,本症例はアルコール性肝硬変に合併したspur cell anemiaと診断した.経過中,皮下出血斑の出現とともに高エンドトキシン血症を呈し,disseminated intravascular coagulopathy (DIC)の合併が危惧されたため,ポリミキシンBおよびカナマイシンの投与を開始したところ,エンドトキシンの低下とともに出血傾向は消失した.spur cell anemiaは溶血をtriggerとしてDICを高率に合併し予後不良とされ,その治療は未だ確立されていない.本症例は高エンドトキシン血症対策がDIC合併の予防に有用であった1例と考えられた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.35.689