A型大動脈解離術後に発症した化膿性脊椎炎の1例

症例は58歳,女性.下肢虚血を伴うA型大動脈解離と診断し,救肢のために右腋窩動脈-両側大腿動脈バイパス術を施行した後,上行大動脈置換術を施行した.第10病日より38°Cを越える発熱を来した.発熱の原因を検索したが同定するに至らなかった.第20病日頃より胸部違和感,背部痛を訴えるようになった.胸部CT, 血管造影 (IV-DSA) を施行したが明らかな解離の進行,残存解離の拡大,人工血管周囲の血栓は認めなかった.37°C前半の微熱と炎症反応の高値は持続したままで経過した.術後70日目に突然両下肢の脱力感を自覚し,その直後に対麻痺が出現した.解離に伴う脊髄動脈の閉塞を疑ったが, CT, IV-DS...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 61; no. 1; pp. 218 - 221
Main Authors 岩田, 尚, 森, 義雄, 広瀬, 一, 安田, 博之, 村川, 真司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.01.2000
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.61.218

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Summary:症例は58歳,女性.下肢虚血を伴うA型大動脈解離と診断し,救肢のために右腋窩動脈-両側大腿動脈バイパス術を施行した後,上行大動脈置換術を施行した.第10病日より38°Cを越える発熱を来した.発熱の原因を検索したが同定するに至らなかった.第20病日頃より胸部違和感,背部痛を訴えるようになった.胸部CT, 血管造影 (IV-DSA) を施行したが明らかな解離の進行,残存解離の拡大,人工血管周囲の血栓は認めなかった.37°C前半の微熱と炎症反応の高値は持続したままで経過した.術後70日目に突然両下肢の脱力感を自覚し,その直後に対麻痺が出現した.解離に伴う脊髄動脈の閉塞を疑ったが, CT, IV-DSAでは前回と同様であった. MRIを施行し,脊椎に異常陰影を認め,化膿性脊椎炎とそれによる対麻痺と診断した.麻痺出現2日後に手術(前方固定術)を施行したが,対麻痺は改善しなかった.外科手術後には,化膿性脊髄炎が起こり得ることを念頭に置くべきであると思われた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.61.218