多発外傷を伴った外傷性大動脈損傷の1手術救命例

症例は63歳,男性.オートバイ運転中の対自動車事故により右血気胸,右肺挫傷,右多発肋骨骨折,骨盤骨折,右足関節骨折を受傷した.近医で入院加療中に再検した胸部CTで大動脈周囲および縦隔の血腫が確認され,外傷性大動脈損傷の診断により受傷3日目に当院転院となった.厳重な保存的降圧治療を施行したが,4日目に再出血の兆候が出現し,緊急手術となった.左第4肋間前側方開胸,F-Fバイパスに左肺動脈脱血を加えた部分体外循環下に下行大動脈人工血管置換術を行った.損傷部位は大動脈峡部で約1/3周性の内膜断裂を認めた.懸念された肺合併症,他臓器の出血性合併症もなく,術後経過は順調であった.多発外傷を伴う外傷性大動脈...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 35; no. 6; pp. 343 - 346
Main Authors 渡辺, 裕之, 丸山, 拓人, 小林, 香代子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.11.2006
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.35.343

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Summary:症例は63歳,男性.オートバイ運転中の対自動車事故により右血気胸,右肺挫傷,右多発肋骨骨折,骨盤骨折,右足関節骨折を受傷した.近医で入院加療中に再検した胸部CTで大動脈周囲および縦隔の血腫が確認され,外傷性大動脈損傷の診断により受傷3日目に当院転院となった.厳重な保存的降圧治療を施行したが,4日目に再出血の兆候が出現し,緊急手術となった.左第4肋間前側方開胸,F-Fバイパスに左肺動脈脱血を加えた部分体外循環下に下行大動脈人工血管置換術を行った.損傷部位は大動脈峡部で約1/3周性の内膜断裂を認めた.懸念された肺合併症,他臓器の出血性合併症もなく,術後経過は順調であった.多発外傷を伴う外傷性大動脈損傷では待機手術とすることで他臓器の出血性合併症のリスクを軽減しうるが,再出血の兆候を見逃すことなく適切に手術時期を判断することが重要である.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.35.343