直腸癌との鑑別が困難であった急性出血性直腸潰瘍の1例

症例は72歳男性。アルコール多飲後に意識障害にて救急搬送され, 急性アルコール中毒の診断で補液と酸素投与を施行した。意識障害と血圧低下を認めたが軽快, しかし翌日より下血が出現, 5日後に外科外来を受診し精査目的にて入院した。大腸内視鏡にて直腸に全周性の潰瘍性病変を認めた。腹部CT検査にて直腸Rb領域に約6cmの壁肥厚と狭窄像を認め, 直腸癌が疑われたが生検にて悪性所見はなかった。その後2回の大腸内視鏡検査にて潰瘍は次第になだらかとなり, 粘膜の発赤や浮腫は軽快傾向となり, やはり生検組織には癌はなく, 直腸潰瘍の診断となった。組織検査にて, 潰瘍性大腸炎やクローン病などの特異的な炎症性腸疾患...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 26; no. 6; pp. 769 - 773
Main Authors 五本木, 武志, 折居, 和雄, 飯田, 浩行, 軍司, 直人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 30.09.2006
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem1993.26.769

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Summary:症例は72歳男性。アルコール多飲後に意識障害にて救急搬送され, 急性アルコール中毒の診断で補液と酸素投与を施行した。意識障害と血圧低下を認めたが軽快, しかし翌日より下血が出現, 5日後に外科外来を受診し精査目的にて入院した。大腸内視鏡にて直腸に全周性の潰瘍性病変を認めた。腹部CT検査にて直腸Rb領域に約6cmの壁肥厚と狭窄像を認め, 直腸癌が疑われたが生検にて悪性所見はなかった。その後2回の大腸内視鏡検査にて潰瘍は次第になだらかとなり, 粘膜の発赤や浮腫は軽快傾向となり, やはり生検組織には癌はなく, 直腸潰瘍の診断となった。組織検査にて, 潰瘍性大腸炎やクローン病などの特異的な炎症性腸疾患やカルチノイド, サルコイドーシスは否定的であった。高血圧, 狭心症の既往があり, 発症前に急性アルコール中毒に伴う血圧低下があったことから, 直腸粘膜の循環障害により直腸潰瘍を生じたものと思われた。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem1993.26.769