コミュニケーションの脳科学~脳磁場ハイパースキャニングの知見

【要旨】 社会を構成する脳機能である「社会脳」は認知神経科学の重要な研究分野である。社会を構成する上で欠かせないコミュニケーションの神経基盤を明らかにするために、コミュニケーションしている複数の被験者の脳活動を同時に計測するハイパースキャニングが行われるようになった。無侵襲・低侵襲で脳機能を計測する代表的な機器は、脳波計、脳磁計、近赤外分光装置、fMRIであるが、脳磁計は時間分解能と空間分解能に優れているのでコミュニケーション計測に適していると考えられる。しかし複数の脳磁計を保有している研究施設は世界的にも稀であり、研究例は限られる。そこで、北海道大学が保有する2台の脳磁計を光ファイバで接続し...

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Published in認知神経科学 Vol. 26; no. 3+4; pp. 95 - 104
Main Authors 横澤, 宏一, 渡辺, 隼人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 認知神経科学会 2024
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ISSN1344-4298
1884-510X
DOI10.11253/ninchishinkeikagaku.26.95

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Summary:【要旨】 社会を構成する脳機能である「社会脳」は認知神経科学の重要な研究分野である。社会を構成する上で欠かせないコミュニケーションの神経基盤を明らかにするために、コミュニケーションしている複数の被験者の脳活動を同時に計測するハイパースキャニングが行われるようになった。無侵襲・低侵襲で脳機能を計測する代表的な機器は、脳波計、脳磁計、近赤外分光装置、fMRIであるが、脳磁計は時間分解能と空間分解能に優れているのでコミュニケーション計測に適していると考えられる。しかし複数の脳磁計を保有している研究施設は世界的にも稀であり、研究例は限られる。そこで、北海道大学が保有する2台の脳磁計を光ファイバで接続し、AV機器でコミュニケーションする2者の脳活動を同時記録できるようにした。これまでに無言対面による非言語コミュニケーション、音楽的コミュニケーション、言語コミュニケーションのほか、アバターコミュニケーションなどの研究を実施し、広範な脳領域がmentalizingなど社会脳に関わる可能性を示した。実在の相手と直接コミュニケーションするハイパースキャニングは、自閉スペクトラム症や統合失調症の機序に新たな知見を与える可能性もある。今後、社会的相互作用(コミュニケーション)についての理解が深まり、社会脳の基盤が解明されることが期待される。
ISSN:1344-4298
1884-510X
DOI:10.11253/ninchishinkeikagaku.26.95