ステークホルダーの知識活用と放射性魔棄物管理
政策形成において活用すべき知識には,学術的な専門家の理論知だけではなく,一般市民の常識知や,ステークホルダー(利害関係主体)の現場知も含まれる。特にステークホルダーの知識や利害関心を考慮しない決定は正統性や受容可能性が低くなりやすいため,多様な現場知を活用することは,規範的にも戦略的にも重要である。そこで本稿は,ステークホルダーの知識を活用する方法について検討を加える。また,その成果を踏まえて日本の放射性廃棄物管理政策を批判的に考察する。多くの場合に暗黙知として保有されているステークホルダーの現場知を,理論知などと統合することには,困難が伴う。それは,異なる種類の専門知である現場知と理論知を架...
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Published in | 公共政策研究 Vol. 22; pp. 100 - 112 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本公共政策学会
10.12.2022
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Subjects | |
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ISSN | 2186-5868 2434-5180 |
DOI | 10.32202/publicpolicystudies.22.0_100 |
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Summary: | 政策形成において活用すべき知識には,学術的な専門家の理論知だけではなく,一般市民の常識知や,ステークホルダー(利害関係主体)の現場知も含まれる。特にステークホルダーの知識や利害関心を考慮しない決定は正統性や受容可能性が低くなりやすいため,多様な現場知を活用することは,規範的にも戦略的にも重要である。そこで本稿は,ステークホルダーの知識を活用する方法について検討を加える。また,その成果を踏まえて日本の放射性廃棄物管理政策を批判的に考察する。多くの場合に暗黙知として保有されているステークホルダーの現場知を,理論知などと統合することには,困難が伴う。それは,異なる種類の専門知である現場知と理論知を架橋するための対話型専門知が,しばしば欠如しているからである。対話型専門知を蓄積して異なる知識を統合するためには,ステークホルダーと学術的な専門家が,知識の共同生産を志向するような能動的な参加と開放的かつボトムアップ型の対話を通じて,互いの知識をすり合わせるプロセスが必要だと考えられる。放射性廃棄物管理においてはステークホルダーの関与が不可欠だが,日本では受動的な参加や閉鎖的な対話のみが用いられており,ステークホルダーの知識活用や,それを通じた正統性・受容可能性の向上は望みにくい。高レベル放射性廃棄物の処理というウィキッド・プロブレムに対処するためには,意思決定プロセスの見直しが求められる。 |
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ISSN: | 2186-5868 2434-5180 |
DOI: | 10.32202/publicpolicystudies.22.0_100 |