新合成抗菌剤CiproHoxacinの胆嚢炎に対する臨床的研究

生活様式, 食生活の変化等により, 疾患の様相も以前とはかなり変つてきている。 今日, 増加している疾患の一つに胆道系感染症が挙げられる。急性胆嚢炎患者が夜間救急患者として受診することも多くなったが, 超音波診断法の普及などによつて, 胆石の発見が比較的容易となり, 胆石症にて手術を施行される症例も増加している。胆嚢炎の原因は, 胆石症及び細菌感染によるもののほかに, 胆汁組成の変化などによる化学的原因もあるとされているが, 細菌の存在は胆道系の炎症を悪化させるので, 抗菌抗生剤の投与が重要となってくる。 現在, 胆嚢炎として受診する患者の多くは, 胆石を有し, 細菌感染を伴っているものが大部...

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Published inThe Japanese Journal of Antibiotics Vol. 39; no. 10; pp. 2675 - 2684
Main Authors 沢田, 康夫, 中村, 孝, 橋本伊, 久雄, 戸次, 英一, 三上, 二郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本感染症医薬品協会 1986
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ISSN0368-2781
2186-5477
DOI10.11553/antibiotics1968b.39.2675

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Summary:生活様式, 食生活の変化等により, 疾患の様相も以前とはかなり変つてきている。 今日, 増加している疾患の一つに胆道系感染症が挙げられる。急性胆嚢炎患者が夜間救急患者として受診することも多くなったが, 超音波診断法の普及などによつて, 胆石の発見が比較的容易となり, 胆石症にて手術を施行される症例も増加している。胆嚢炎の原因は, 胆石症及び細菌感染によるもののほかに, 胆汁組成の変化などによる化学的原因もあるとされているが, 細菌の存在は胆道系の炎症を悪化させるので, 抗菌抗生剤の投与が重要となってくる。 現在, 胆嚢炎として受診する患者の多くは, 胆石を有し, 細菌感染を伴っているものが大部分を占めている1)。 胆嚢炎あるいは胆道系感染症における起炎菌は, 以前に多くみられたグラム陽性球菌群は減少し, 大腸菌, 肺炎桿菌などを主とするグラム陰性桿菌群が主なものとなっている。しかも1種の菌だけではなく, 2種あるいは多種の菌が起炎菌として検出される複数菌感染症が多くなつてきている1~4)。 今日, 大きく進歩発達を遂げたグラム陰性桿菌群に対する抗生剤としては, β-Lactam系抗生剤があるが, これらの大部分は注射剤であって, 患者の症状によっては内服剤で充分な効果が期待でき, 又, 内服剤が望ましいことも多い。現在広く使用されている内服抗生剤には, Macrolide系, Tetracycline系, β-Lactam系などがあるが, 一部を除いて主としてグラム陽性球菌を対象として使用されている。グラム陰性桿菌群を主目的とする内服剤としては, 合成抗菌剤があり, Nalidixic acid (NA), Piromidic acid (PA), Pipemidic acid (PPA) などが, 主として細菌性下痢症, 尿路系感染症等に今日広く使用されている4)。 近年, グラム陽性菌からグラム陰性菌に及ぶ幅広い抗菌スペクトラムを有するピリドンカルボン酸系の合成抗菌剤が開発されてきた。 今回, 嫌気性菌を含むグラム陽性菌, グラム陰性菌に対して幅広く優れた抗菌力を有するCiprofloxacin (BAYO 9867, CPFXと略す) が開発された。本剤はその抗菌スペクトラム, 抗菌力及び胆道系に対する移行が良好である点から胆道系感染症に対しても有用性が期待されるので, 主として急性及び亜急性の胆嚢炎に使用して内服による治療を行い, 若干の成績を得たので報告する。
ISSN:0368-2781
2186-5477
DOI:10.11553/antibiotics1968b.39.2675