産業保健専門職が発揮するリーダーシップの準備状態を測定する尺度:TOMHリーダーシップチェックリスト(TLC)の開発と信頼性・妥当性の検証
目的:近年,質の高い産業保健活動を展開するために,産業保健専門職がリーダーシップを発揮することが求められている.本研究では,産業保健専門職が権限によらないリーダーシップを発揮するために必要な準備状態を測定するチェックリスト(The University of Tokyo Occupational Mental Health [TOMH] Leadership Checklist: TLC)を開発し,TLCの信頼性・妥当性を統計的に検証することを目的とした.対象と方法:文献レビューおよび産業保健専門職を対象としたインタビューに基づき,6因子54項目(自己理解10項目,状況把握10項目,ビジョン9...
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Published in | 産業衛生学雑誌 Vol. 66; no. 1; pp. 31 - 44 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本産業衛生学会
20.01.2024
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Subjects | |
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ISSN | 1341-0725 1349-533X |
DOI | 10.1539/sangyoeisei.2022-015-E |
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Summary: | 目的:近年,質の高い産業保健活動を展開するために,産業保健専門職がリーダーシップを発揮することが求められている.本研究では,産業保健専門職が権限によらないリーダーシップを発揮するために必要な準備状態を測定するチェックリスト(The University of Tokyo Occupational Mental Health [TOMH] Leadership Checklist: TLC)を開発し,TLCの信頼性・妥当性を統計的に検証することを目的とした.対象と方法:文献レビューおよび産業保健専門職を対象としたインタビューに基づき,6因子54項目(自己理解10項目,状況把握10項目,ビジョン9項目,心構え12項目,業務遂行3項目,人間関係構築10項目)から構成される尺度のドラフト版を作成した.次に,産業保健専門職(人事労務,安全衛生,健康管理のいずれかの部門に所属する者)300名を対象に,webによる横断調査を実施し,信頼性・妥当性を検証した.結果:主因子法・プロマックス回転を用いた探索的因子分析を実施した結果,5因子51項目が得られた(自己理解8項目,状況把握10項目,ビジョン9項目,心構え12項目,業務遂行12項目).次に,確認的因子分析を行った結果,適合度指標はCFI = 0.877,SRMR = 0.050,およびRMSEA = 0.072となった.また,TLCの5つの下位尺度のCronbach’α 係数は,0.93~0.96となった.TLCの合計および下位尺度はいずれも,ワーク・エンゲイジメント,職務満足度,および自己効力感との間に有意な正の相関が認められた(p < .05).一方,心理的ストレス反応との間に有意な負の相関が認められた(p < .05).加えて,「権限によらないリーダーシップを発揮したことはあるか」という質問に対して「はい」と回答した群は,「いいえ」と回答した群に比べて,TLCの合計得点および下位尺度得点が有意に高かった(p < .001).考察と結論:本研究で産業保健専門職向けに新たに開発したTLCは一定の内的一貫性,構造的妥当性,構成概念妥当性(収束的妥当性および既知集団妥当性)を有することが示唆された. |
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ISSN: | 1341-0725 1349-533X |
DOI: | 10.1539/sangyoeisei.2022-015-E |