投与間隔設定用ノモグラムを利用したバンコマイシンの処方適正化と添付文書記載内容の検討

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症に有効な塩酸バンコマイシン(VCM)の点滴静注に際しては, 腎機能障害患者での排泄遅延や, 腎毒性あるいは聴覚毒性の発現と血中濃度との関連性など, いくつかの留意すべき点のあることが知られている1-6). 実際, これらの点を考慮して投与量を設定すべきことについては, VCMの添付文書にも詳述されており, 処方医の認識も使用頻度とともに高まりつつあるといえよう. 一方, VCMの血中濃度モニタリング(TDM)にもとづいた研究報告のなかには, 添付文書に記載されている腎機能低下患者への投与量設定用ノモグラム(用量法)3)の有用性を疑問視するもの7)や...

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Published in病院薬学 Vol. 23; no. 3; pp. 231 - 238
Main Authors 小西, 廣己, 山路, 昭, 森田, 邦彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本医療薬学会 1997
日本病院薬学会
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ISSN0389-9098
2185-9477
DOI10.5649/jjphcs1975.23.231

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Summary:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症に有効な塩酸バンコマイシン(VCM)の点滴静注に際しては, 腎機能障害患者での排泄遅延や, 腎毒性あるいは聴覚毒性の発現と血中濃度との関連性など, いくつかの留意すべき点のあることが知られている1-6). 実際, これらの点を考慮して投与量を設定すべきことについては, VCMの添付文書にも詳述されており, 処方医の認識も使用頻度とともに高まりつつあるといえよう. 一方, VCMの血中濃度モニタリング(TDM)にもとづいた研究報告のなかには, 添付文書に記載されている腎機能低下患者への投与量設定用ノモグラム(用量法)3)の有用性を疑問視するもの7)や, 添付文書に記載のない投与間隔の設定を推奨するもの8)が見られる. これらの報告を総合すると, 添付文書の記述を指針とした現在のVCMの処方内容が, 必ずしも適正とは言い切れない実態を含んでいることが推察される. 筆者らは, VCMの処方を適正化する上で障害となる要因を明らかにすべく, 現在提唱されている患者のクレアチニンクリアランス(CLcr)値にもとづく二つのノモグラム法, すなわち添付文書記載の用量法(Fig. 2)と, 固定された投与量(初回25mg/kg, 2回目以降19mg/kg)のもとにCLcr値に応じた投与間隔を設定できるMatzkeらの方法(投与間隔法, Hg. 2)4)の有用性を比較し, その結果にもとづいた院内の広報活動の前後での処方内容およびTDMデータの変遷を調査した.
ISSN:0389-9098
2185-9477
DOI:10.5649/jjphcs1975.23.231