ヒト精巣における問質内毛細リンパ管ならびに精細管周囲境界組織の微細構造について

9個体 (11~77歳) の正常精巣組織と6個体 (25~33歳) の精子発生不全例の精巣組織を透過型電子顕微鏡用切片とし, 精巣間質の微細構造について観察した. 精巣問質内には毛細リンパ管がしばしば存在し, これに Leydig 細胞が近接する像も認められた. 基底層の著しく乏しいリンパ管内皮には, 所により内皮細胞相互間の幅2μmにも達するような隙間が存在することが明らかとなつた. さらに, 多くの個体に齧歯類動物の精巣間質におけるリンパ類洞に酷似した構造を認めた. 以上から, 精巣ホルモンの流出路の一つとしてのリンパ管系の果たす役割りが推察された. 精細管境界組織は, 1. 精細管上皮基...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 72; no. 10; pp. 1298 - 1319
Main Author 萬谷, 嘉明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 1981
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ISSN0021-5287
1884-7110
DOI10.5980/jpnjurol1928.72.10_1298

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Summary:9個体 (11~77歳) の正常精巣組織と6個体 (25~33歳) の精子発生不全例の精巣組織を透過型電子顕微鏡用切片とし, 精巣間質の微細構造について観察した. 精巣問質内には毛細リンパ管がしばしば存在し, これに Leydig 細胞が近接する像も認められた. 基底層の著しく乏しいリンパ管内皮には, 所により内皮細胞相互間の幅2μmにも達するような隙間が存在することが明らかとなつた. さらに, 多くの個体に齧歯類動物の精巣間質におけるリンパ類洞に酷似した構造を認めた. 以上から, 精巣ホルモンの流出路の一つとしてのリンパ管系の果たす役割りが推察された. 精細管境界組織は, 1. 精細管上皮基底層, 2. 線維成分 (膠原原線維, 微細細線維および微細細糸を含む), および3. 細胞成分 (筋様細胞と線維芽細胞からなる) より構成され, 正常精巣組織内でも加齢に伴つて特に上記1と2の厚みが次第に増加する一方, 2に含まれる単一膠原原線維の太さは逆に減少するという一般的傾向を認めた. 6個体の精子発生不全例においては, 比較的若年齢でも高齢者の正常精巣組織内にみられる変化に匹敵するような境界組織の肥厚を認めた. さらに, 本研究で調査した60歳以上の全6個体と3個体の無精子症 (25, 31, 32歳) では, 花弁状の横断面を示す異常膠原原線維 (Ehlers-Danlos 症候群I型, VII型等の例でみられることが知られている) の出現が認められた. 比較的若年者でも精子発生不全例では, 高齢者にみられる精巣間質内の変化がすでに生じていることは注目に価すると考えられた.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.72.10_1298