小児生体肝移植後にリンパ管増生が原因と考えられた多量胸腹水をきした一例

症例は1歳7ヶ月女児、胆道閉鎖症、体重13.8kg。父をドナーに生体肝移植を行った。外側区域グラフト、GV/SLV 57.3%, GRWR 1.7%、血液型は適合であった。免疫抑制剤はタクロリムスとステロイドとした。術後3週間までの経過は良好であったが、術後3週間頃から右胸水が出現、呼吸状態が悪化しドレナージ開始した。その後、2~3000ml/日の胸腹水の排出を認め、最大約4500ml /日に達した。胸水は乳びで、オトクレオチドなどの保存的加療とリンパ組織郭清術など複数回の外科治療を行ったが、胸水を止めるに至らなかった。術後3ヶ月から敗血症を繰り返し、術後4ヶ月でARDSを発症、透析導入した。...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s368_2
Main Authors 出口, 幸一, 東原, 大樹, 野村, 元成, 奥山, 宏臣, 神山, 雅史, 渡邊, 美穂, 木村, 武司, 宇賀, 菜緒子, 上野, 豪久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2024
Online AccessGet full text
ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.59.Supplement_s368_2

Cover

More Information
Summary:症例は1歳7ヶ月女児、胆道閉鎖症、体重13.8kg。父をドナーに生体肝移植を行った。外側区域グラフト、GV/SLV 57.3%, GRWR 1.7%、血液型は適合であった。免疫抑制剤はタクロリムスとステロイドとした。術後3週間までの経過は良好であったが、術後3週間頃から右胸水が出現、呼吸状態が悪化しドレナージ開始した。その後、2~3000ml/日の胸腹水の排出を認め、最大約4500ml /日に達した。胸水は乳びで、オトクレオチドなどの保存的加療とリンパ組織郭清術など複数回の外科治療を行ったが、胸水を止めるに至らなかった。術後3ヶ月から敗血症を繰り返し、術後4ヶ月でARDSを発症、透析導入した。術後5ヶ月で消化管出血をきたし血管造影を行った。上腸間膜動脈造影では右横隔膜下に増生した血管を認め、そこから胸腔内へのシャント血流を認めた。また、下横隔膜動脈から肺静脈へのシャント血流も描出された。門脈造影では門脈狭窄は認められず、右結腸静脈の分枝にコイル塞栓を行ったが、肝不全にて移植後5ヶ月22日で永眠された。本症例は血管造影でシャント血管が発達しており、同様にリンパ管も増生したと考えられ、それが多量の胸腹水の原因であったと推察された。生体肝移植後の胸腹水はたびたび見られるが、本症例は経過・原因ともに稀有な症例であった。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.59.Supplement_s368_2