免疫抑制剤の要らない肝移植の普及を目指して

【目的】免疫寛容は、非自己の抗原に暴露され認識しながらも排除せず不応答状態にまで巧妙に調節する生体恒常性の維持機構である。免疫寛容が誘導・維持されると社会的には、免疫抑制剤の長期内服に伴う副作用リスクは軽減され、副作用の治療を目的とした複数薬剤の内服やマスク等の感染防御や服薬コンプライアンスなどの制約された生活から解放となり患者のQOL改善、社会参加の促進につながることが期待されるが、その実態に関するエビデンスは限られる。そこで、本邦の免疫寛容患者の実態を調査することとした。【方法】本邦で肝移植の実施経験のある医療機関を対象にfeasibility調査を実施。その結果を基に、免疫寛容患者を対象...

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Published in移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s139_2
Main Authors 奥村, 康, 竹田, 和由, 江川, 裕人, 広田, 沙織, 前原, 由依, 波多野, 悦朗, 内田, 浩一郎, 江口, 晋, 大段, 秀樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2024
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.59.Supplement_s139_2

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Summary:【目的】免疫寛容は、非自己の抗原に暴露され認識しながらも排除せず不応答状態にまで巧妙に調節する生体恒常性の維持機構である。免疫寛容が誘導・維持されると社会的には、免疫抑制剤の長期内服に伴う副作用リスクは軽減され、副作用の治療を目的とした複数薬剤の内服やマスク等の感染防御や服薬コンプライアンスなどの制約された生活から解放となり患者のQOL改善、社会参加の促進につながることが期待されるが、その実態に関するエビデンスは限られる。そこで、本邦の免疫寛容患者の実態を調査することとした。【方法】本邦で肝移植の実施経験のある医療機関を対象にfeasibility調査を実施。その結果を基に、免疫寛容患者を対象とした臨床研究を計画、実施した。【結果】feasibility調査の結果、免疫寛容患者は全国で158例であった。そのうち、早期に免疫寛容が樹立できた患者は54例であった。これら患者を対象に長期合併症の発現割合、予後評価及びバイオマーカーの探索を目的とした研究を開始することができた。【考察】免疫寛容患者の実態を明らかにすることは、免疫抑制剤の副作用や長期予後の評価、術後フォロー(来院間隔,検査項目、肝生検タイミング)のサーベイランスプロトコルの確立に貢献できると考える。また、臨床研究の参加を通して社会への還元を患者自らが見出す機会となり得ることが期待される。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.59.Supplement_s139_2