唇顎口蓋裂者の乳歯歯列弓の経年観察

研究目的は,唇顎口蓋裂者の乳爾列期から混合歯列期における,歯列弓の成長変化を経年的に調査することである.研究対象は,九州大学爾学部附属病院口腔外科で口唇裂あるいは口蓋裂の再建手術を受け,経年的に2回以上の印象採得ができた154名である(唇裂13名,唇顎裂24名,両側性唇顎口蓋裂23名,片側性唇顎口蓋裂58名,口蓋裂単独36名).これら唇顎口蓋裂者の誕生月近くで3~4歳から最高11歳までの矯正治療前に採得された石膏模型を,資料として用いた.上・下顎乳犬歯澗幅径,上顎第一・第二乳臼歯問幅径,下顎第二乳臼歯間幅径,上・下顎歯列弓長径上顎歯槽基底部幅径(乳犬歯部,第二乳臼歯部)を計測し,裂型別に比較検...

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Published in日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 17; no. 3; pp. 169 - 185
Main Authors 大石, 正道, 鈴木, 陽, 田代, 英雄, 岡, 増一郎, 河野, 紀美子, 寺田, 久美子, 後藤, 圭也, 竹之下, 康治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口蓋裂学会 1992
Subjects
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ISSN0386-5185
2186-5701
DOI10.11224/cleftpalate1976.17.3_169

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Summary:研究目的は,唇顎口蓋裂者の乳爾列期から混合歯列期における,歯列弓の成長変化を経年的に調査することである.研究対象は,九州大学爾学部附属病院口腔外科で口唇裂あるいは口蓋裂の再建手術を受け,経年的に2回以上の印象採得ができた154名である(唇裂13名,唇顎裂24名,両側性唇顎口蓋裂23名,片側性唇顎口蓋裂58名,口蓋裂単独36名).これら唇顎口蓋裂者の誕生月近くで3~4歳から最高11歳までの矯正治療前に採得された石膏模型を,資料として用いた.上・下顎乳犬歯澗幅径,上顎第一・第二乳臼歯問幅径,下顎第二乳臼歯間幅径,上・下顎歯列弓長径上顎歯槽基底部幅径(乳犬歯部,第二乳臼歯部)を計測し,裂型別に比較検討した. 結果:歯列弓幅径の経年的変化は,裂型により異なっていた.CLやCLPの大多数の患者では,歯列弓幅径は経年的に増大した.しかし,CPの20~40%の患者においては歯列弓幅径は減少した.さらに,両側性CLPでは60~70%で,片側性CLPでは40~55%で歯列弓幅径の減少が見られた.上顎複合体の骨連続性が,歯列弓形態の決定に重要な因子であることが考えられる.歯列弓長径の変化には,口蓋裂単独例を除いて裂型による特異性は認められなかった.上顎第一乳臼歯間幅径は,乳犬苗や第二乳臼歯問幅径よりも,幅径の減少を高頻度に示した.これは口蓋形成術後の癒痕収縮による影響と考えられる. 口蓋形成直後には歯列弓幅径の減少が認められるが,catch-up growthにより本来の成長に回帰し,幅径は増大すると考えられているが,個々の症例では増大あるいは減少変化を示す症例があり,その変化量も大小さまざまであった.4~8歳頃に歯列弓幅径の大きな変化が認められるものがあり,特に6~8歳頃に著しい変化を示す症例が認められた.
ISSN:0386-5185
2186-5701
DOI:10.11224/cleftpalate1976.17.3_169