心臓移植後の長期生存者における社会活動、死生観に照らしたメンタルケア:アドバンス・ケア・プランニングの適用

【背景】日本における心臓移植症例数は増加傾向にあり、小児期に渡航移植を受けた患者の多くも成人期に達しつつある。これら長期生存者の社会復帰および慢性期合併症への対応の重要性が高まっている。一方、心臓移植後の社会復帰率は他の固形臓器移植と比較して低い。また、日本では心臓再移植に様々なハードルがありアドバンストケアプラニング(ACP)の導入も課題となる。【方法】国際心肺移植学会ガイドライン委員会で収集したデータを基に、死生観や家族制度が日本と共通項の多いアジア諸国(インド・韓国)および国内自験例のACPを分析した。特に移植後患者が直面する社会復帰への取り組みを検討し、25年以上を経過し心臓再移植や腎...

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Published in移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s309_3
Main Authors 中島, 菜穂子, 田山, 栄基, 福本, 義弘, 加藤, 倫子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2024
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.59.Supplement_s309_3

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Summary:【背景】日本における心臓移植症例数は増加傾向にあり、小児期に渡航移植を受けた患者の多くも成人期に達しつつある。これら長期生存者の社会復帰および慢性期合併症への対応の重要性が高まっている。一方、心臓移植後の社会復帰率は他の固形臓器移植と比較して低い。また、日本では心臓再移植に様々なハードルがありアドバンストケアプラニング(ACP)の導入も課題となる。【方法】国際心肺移植学会ガイドライン委員会で収集したデータを基に、死生観や家族制度が日本と共通項の多いアジア諸国(インド・韓国)および国内自験例のACPを分析した。特に移植後患者が直面する社会復帰への取り組みを検討し、25年以上を経過し心臓再移植や腎移植を希望した患者、悪性腫瘍で緩和ケアに移行した患者におけるACPの適応事例を紹介する。また、心理的サポートの専門家を含む多職種チームによるメンタルケアの重要性についても検討した。【結果】欧米での3ステップセオリーに基づくACPは、アジア諸国においても患者のQOLを維持し、適切な医療決定を促進することが確認され日本においても有用と考えられた。国内外の事例から、心臓移植後の社会復帰率においては支援体制の違いが大きく影響していることが示唆された。【まとめ】社会復帰支援とACPの普及は再移植が困難な日本では特に重要であり、移植待機中からの介入が望ましい。具体的なACPのガイドラインの策定と普及活動が急務であると考えられる。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.59.Supplement_s309_3