脳死ドナー摘出の現状の問題点と持続可能なシステム構築に向けての提言~現場の一施設の若手外科医からの視点

本邦での脳死ドナーの臓器摘出では、各臓器につき2-5人の外科医が「昼夜を問わず」「摘出開始の3時間前に」「器材や灌流液や氷を持参して」「正装で」提供施設に集結し臓器摘出・搬送を担う、多大な時間とマンパワーを費やす体制である。当科では、現行の体制下では、施設単位の工夫では人員削減は困難と考え、臓器摘出・搬送を行う先発隊2人と、器械出し・機材搬送・還流液の管理・閉腹・自施設との情報共有等を行う後発隊2人の計4人という従来の方法をやむを得ず踏襲している。近年の臓器摘出の機会の増加に伴い(2021年:5件、2020年・2022年:12件、2023年:22件)、若手の執刀機会が増え卒後10数年の医師をリ...

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Published in移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s168_2
Main Authors 長谷川, 潔, 西岡, 裕次郎, 岡, 奈緒美, 三原, 裕一郎, 赤松, 延久, 河口, 義邦, 高本, 健史, 高橋, 龍玄, 市田, 晃彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2024
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.59.Supplement_s168_2

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Summary:本邦での脳死ドナーの臓器摘出では、各臓器につき2-5人の外科医が「昼夜を問わず」「摘出開始の3時間前に」「器材や灌流液や氷を持参して」「正装で」提供施設に集結し臓器摘出・搬送を担う、多大な時間とマンパワーを費やす体制である。当科では、現行の体制下では、施設単位の工夫では人員削減は困難と考え、臓器摘出・搬送を行う先発隊2人と、器械出し・機材搬送・還流液の管理・閉腹・自施設との情報共有等を行う後発隊2人の計4人という従来の方法をやむを得ず踏襲している。近年の臓器摘出の機会の増加に伴い(2021年:5件、2020年・2022年:12件、2023年:22件)、若手の執刀機会が増え卒後10数年の医師をリーダーとした摘出チーム編成が可能となった。一方で、昨今の働き方改革や減少の一途を辿る外科医の志望者数を考慮すると、件数が更に増加した場合の体制維持は困難と予想される。摘出に携わる外科医の総数という点で互助制度は解決策となり難い。後発隊の仕事が現地で調達可能であれば人員は削減可能である。それも、提供病院の協力や業者による搬送を活用し、各臓器チームで担っている仕事内容を一括化するシステムの構築により、スリム化したタスクシフトが可能と考える。現状より少人数での脳死ドナー摘出はシステム改変により実現可能であると考えられ、現場で働き始めた移植外科医の視点からみた改善点や新しいシステムについての案を提言したい。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.59.Supplement_s168_2