膵グラフト保存液由来の多剤耐性菌による感染症治療に難渋した膵腎同時移植の1例

【諸言】臓器保存液の培養結果が陽性となる症例は存在するが,保存液由来の菌による感染症の報告は多くない.今回,膵グラフト保存液由来の多剤耐性緑膿菌による感染症のコントロールに難渋した膵腎同時移植の1例を経験したので報告する.【症例】43歳女性.1型糖尿病による慢性腎不全に対して脳死下膵腎同時移植を行った.ドナー の各種培養検査はいずれも陰性であり,臓器摘出・搬送の過程に問題はなかった.術後,膵グラフト保存液の培養から二剤耐性緑膿菌が検出された.膵グラフト近傍に留置したドレーンの監視培養からも同種の菌が検出されたため,術後8日目より感受性を有する抗菌薬治療を開始した.その後,同様の菌による腹腔内感...

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Published in移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s386_3
Main Authors 石川, 博補, 滝沢, 一泰, 河内, 裕介, 廣瀬, 雄己, 安部, 舜, 三浦, 宏平, 田崎, 正行, 齋藤, 和英, 池田, 正博, 島田, 能史, 坂田, 純, 市川, 寛, 冨田, 善彦, 若井, 俊文, 小林, 隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2024
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.59.Supplement_s386_3

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Summary:【諸言】臓器保存液の培養結果が陽性となる症例は存在するが,保存液由来の菌による感染症の報告は多くない.今回,膵グラフト保存液由来の多剤耐性緑膿菌による感染症のコントロールに難渋した膵腎同時移植の1例を経験したので報告する.【症例】43歳女性.1型糖尿病による慢性腎不全に対して脳死下膵腎同時移植を行った.ドナー の各種培養検査はいずれも陰性であり,臓器摘出・搬送の過程に問題はなかった.術後,膵グラフト保存液の培養から二剤耐性緑膿菌が検出された.膵グラフト近傍に留置したドレーンの監視培養からも同種の菌が検出されたため,術後8日目より感受性を有する抗菌薬治療を開始した.その後,同様の菌による腹腔内感染症,菌血症,腹腔内膿瘍を発症し,抗菌薬治療に加え頻回のドレーン交換を継続した.治療開始後5週間でドレーン培養の陰性を確認し,抗菌薬治療を終了した.術後5ヶ月でドレーンを抜去し,退院した.【考察】臓器保存液由来の菌による感染症の発生頻度は低いものの,発症した場合の予後は非常に悪いことが報告されている.本症例は,膵グラフト保存液の培養結果が陽性と判明した時点で直ちに感受性のある抗菌薬治療を開始した.菌血症や腹腔内感染症を回避することはできなかったが,重症化を防ぎ,最終的に感染を制御することができた.【結論】臓器保存液由来の菌による感染症に対して,早期治療介入するために保存液培養検査は重要である.
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.59.Supplement_s386_3