水俣病における科学と社会(教育講演,<特集>第35回大会(2009年度)熊本大学)

メチル水銀に汚染された魚の摂取によって引き起こされた世界で最初のメチル水銀中毒は、1953年日本の水俣で発生し、1956年にその臨床症状が公式に認められ、水俣病と呼ばれた。しかし、水俣病が公式に確認されて以来、50年以上たった今でも、水俣病の医学は曖昧であるとされ、水俣病の社会的問題は混乱している。50年以上が経過した現在、水俣病の科学的解明は、困難な問題なのだろうか。メチル水銀に曝露したヒトの大脳損傷の影響は、汚染終了40年後の今でも検出されることが明らかになっている。メチル水銀は、人類の持つ敏感な五感(体性感覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚)の中枢を損傷し、その後遺症は長期間持続する。私たち人類...

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Bibliographic Details
Published in保健医療社会学論集 Vol. 20; no. 2; pp. 40 - 49
Main Authors 浴野, 成生, 諏佐, マリ
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本保健医療社会学会 2010
Subjects
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ISSN1343-0203
2189-8642
DOI10.18918/jshms.20.2_40

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Summary:メチル水銀に汚染された魚の摂取によって引き起こされた世界で最初のメチル水銀中毒は、1953年日本の水俣で発生し、1956年にその臨床症状が公式に認められ、水俣病と呼ばれた。しかし、水俣病が公式に確認されて以来、50年以上たった今でも、水俣病の医学は曖昧であるとされ、水俣病の社会的問題は混乱している。50年以上が経過した現在、水俣病の科学的解明は、困難な問題なのだろうか。メチル水銀に曝露したヒトの大脳損傷の影響は、汚染終了40年後の今でも検出されることが明らかになっている。メチル水銀は、人類の持つ敏感な五感(体性感覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚)の中枢を損傷し、その後遺症は長期間持続する。私たち人類の持つ鋭敏な五感を解析、統合する中枢の機能が損なわれるとヒトにどのような現象が起きるのか。それを水俣病は教えてくれる。
ISSN:1343-0203
2189-8642
DOI:10.18918/jshms.20.2_40