小腸移植後患者の長期生存へ向けた課題

【背景】 本邦での小腸移植後短期成績は改善してきているものの長期成績については未だ満足できるものではない。小腸移植後患者の長期生存を得るための課題について、当科での経験症例を通して検討する。【当科症例】 これまでに当科で小腸移植を施行した症例は5例、移植時年齢は平均24.6歳(9-36歳)で、全例が脳死小腸移植である。原疾患はHirschsprung病類縁疾患3例、短腸症1例、MYO5B遺伝子異常1例で、1例に異時性肝小腸移植(肝は生体ドナー)を施行した。患者生存は3/5例(60%)、グラフト生着は2/5例(40%)である。2例の死亡原因は拒絶治療後の感染症、COVID-19感染を契機とした腎...

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Published in移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s221_1
Main Authors 内田, 康幸, 松浦, 俊治, 川久保, 尚徳, 高橋, 良彰, 永田, 公二, 田尻, 達郎, 前田, 翔平, 吉丸, 耕一朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2024
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.59.Supplement_s221_1

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Summary:【背景】 本邦での小腸移植後短期成績は改善してきているものの長期成績については未だ満足できるものではない。小腸移植後患者の長期生存を得るための課題について、当科での経験症例を通して検討する。【当科症例】 これまでに当科で小腸移植を施行した症例は5例、移植時年齢は平均24.6歳(9-36歳)で、全例が脳死小腸移植である。原疾患はHirschsprung病類縁疾患3例、短腸症1例、MYO5B遺伝子異常1例で、1例に異時性肝小腸移植(肝は生体ドナー)を施行した。患者生存は3/5例(60%)、グラフト生着は2/5例(40%)である。2例の死亡原因は拒絶治療後の感染症、COVID-19感染を契機とした腎不全であった。生存例3例のうち、1例はPTLDのコントロールが付かずグラフト摘出を余儀なくされたが生存中である。一方で、グラフト生着している2例では、移植前に比べて栄養状態や患者QOLが劇的に改善しており、グラフト生着例においては小腸移植医療の素晴らしさを感じることができている。2例ともストーマは未だ閉鎖しておらず、定期的内視鏡を継続している。【結語】 小腸移植により腸管不全患者のQOLは劇的に改善する可能性があるが、長期的生存を得るためには、将来的な腎機能やPTLD・感染制御への配慮が鍵となる。小腸移植後免疫抑制療法について、長期成績向上のためのより適切なプロトコールを再検討する必要がある。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.59.Supplement_s221_1