当科における腎移植後リンパ漏発症予防の術中の取り組み

腎移植後リンパ漏・嚢腫の発症頻度は1-12%と報告されている。当科で2023年6月までに施行した生体腎移植56例中、6例(10.7%)で治療を要するリンパ漏が発症した。vessel sealing systemを用いた症例においても発生した。治療として、4例で経皮的ドレナージ、2例でリンパ管造影を施行した。特に近年では、診断的治療としてリンパ管造影の有用性が報告されており、当科の症例でも速やかな治癒が得られた。レシピエント手術での正確なリンパ管の認識と確実な処理が、リンパ漏の予防のために必須であることが示唆された。当科では2023年7月より、レシピエント手術において、色素注入によるリンパ管の同...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s285_2
Main Authors 前鼻, 健志, 中山, 奨, 橋本, 浩平, 舛森, 直哉, 京田, 有樹, 小林, 皇, 太刀川, 公人, 村中, 一平, 吉田, 敬, 田中, 俊明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2024
Online AccessGet full text
ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.59.Supplement_s285_2

Cover

More Information
Summary:腎移植後リンパ漏・嚢腫の発症頻度は1-12%と報告されている。当科で2023年6月までに施行した生体腎移植56例中、6例(10.7%)で治療を要するリンパ漏が発症した。vessel sealing systemを用いた症例においても発生した。治療として、4例で経皮的ドレナージ、2例でリンパ管造影を施行した。特に近年では、診断的治療としてリンパ管造影の有用性が報告されており、当科の症例でも速やかな治癒が得られた。レシピエント手術での正確なリンパ管の認識と確実な処理が、リンパ漏の予防のために必須であることが示唆された。当科では2023年7月より、レシピエント手術において、色素注入によるリンパ管の同定を試みている。cloquetリンパ節に22G翼状針を穿刺し、インジゴカルミン液を3 mL程度注入することで、外腸骨動脈周囲のリンパ管が青染される。血管剥離操作の際には可能な限りこれらの損傷を避け、必要な場合は結紮処理している。この方法で11例の生体腎移植を行ったが、治療が必要なリンパ漏・嚢腫は発症していない。インジゴカルミンによるリンパ管の同定は、悪性腫瘍手術においてセンチネルリンパ節の同定に用いられており、有用性が確立している。腎移植術においても、安価で確実にリンパ管を同定することが可能であり、合併症の回避のために有用であると考えられた。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.59.Supplement_s285_2